魚肉のすり身を油で揚げた、揚げかまぼこをいう。関東で「さつまあげ」、関西では「てんぷら」とよび、鹿児島地方では「つけあげ」という。原料魚としてサメ、スケトウダラなどの冷凍すり身を主にし、これにマグロ、サンマ、イワシなど、普通の練り製品ではあまり利用しない背の青い魚も利用する。これは強く加熱されるので、蒸しかまぼこなどより弾力の低い魚肉も利用することができるからである。またイワシなどが入るため、うま味が増し、油で揚げることにより、さらに味がよくなる。原料魚のすり身に調味料を加え、こねたのち形をつくり、油で揚げ、甘味をやや強く仕上げてある。このほかニンジンやタマネギなどの野菜を刻んで入れたり、またゴボウ、イカ、エビ、ゆで卵などを芯(しん)にして巻いたり、ゴマ、ショウガ、こしょう、唐辛子などの香辛料を加えた製品もある。かまぼこよりも保存がよい。そのまま、あるいは焼いてしょうゆをつけて食べる。また煮つけや、おでん種(だね)にもする。
[河野友美]
魚肉のすり身を油で揚げた練製品の一種。鹿児島では,つけ揚げという。スケトウダラ,サメ,エソ,ホッケなどを主材料として,ニンジン,ニンニクなどの野菜を加え,塩,砂糖その他で調味して油で揚げる。タンパク質12%,脂肪5%,ほかにカルシウム,ビタミンBなどを含み,栄養価は高い。そのまま食べるほか,おでん種や煮つけにする。ゴボウやイカを芯にして巻いたものや,ゆで卵を包んだものも作られる。
執筆者:松本 仲子
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[語源と歴史]
江戸時代,てんぷらは上方文化圏と江戸文化圏では名称は一つながら実体を異にする食べ物であった。上方では魚のすり身を,わんのふたなどで腰高まんじゅうの形にこしらえ,これを素揚げにしたもの,すなわち今日いう薩摩揚げをてんぷらと呼び,江戸ではもっぱら衣揚げをてんぷらと称していた。てんぷらの文献上の初見は1669年(寛文9)刊,京の医師奥村久正による《食道記》に〈てんふらり〉の名で記載されているもので,〈小鳥たたきて,かまくらえび,くるみ,葛たまり〉と記されている。…
※「薩摩揚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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