フタルイミド(読み)ふたるいみど(その他表記)phthalimide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタルイミド」の意味・わかりやすい解説

フタルイミド
ふたるいみど
phthalimide

フタル酸イミド誘導体。フタル酸アミドやフタル酸アンモニウムを加熱すると、環化反応がおこってイミドとなる。無色結晶昇華性がある。水には溶けにくいが、熱エタノールエチルアルコール)には溶ける。弱い酸性があり、アルカリ性水溶液には塩の形となってよく溶ける。カリウム塩のフタルイミドカリウムは、ハロゲン化アルキルを作用させるとN-アルキル誘導体となり、その加水分解でアルキルアミンとフタル酸になるので、アミンの合成試薬としてよく用いられる。

[務台 潔]


フタルイミド(データノート)
ふたるいみどでーたのーと

フタルイミド

 分子式 C8H5NO2
 分子量 147.1
 融点  238℃
 沸点  (昇華)

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改訂新版 世界大百科事典 「フタルイミド」の意味・わかりやすい解説

フタルイミド
phthalimide



無水フタル酸を濃アンモニア水中で強熱すると得られる代表的な酸イミド。水から再結晶したものは無色の針状結晶。昇華してうろこ状結晶になる。融点238℃。

水溶液中で弱い酸性を示し(酸解離指数pKa=8.3),水酸化カリウムを作用させるとフタルイミドカリウムを生ずる。これとハロゲン化アルキルとを反応させてから加水分解すると,第一アミンが合成できる。

この反応は1887年にドイツのガブリエルSiegmund Gabrielが見いだしたもので,第一アミンのガブリエル合成,またはガブリエル反応とよばれる。ガブリエル反応はアミノ酸の合成にも用いられる。
アミン
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化学辞典 第2版 「フタルイミド」の解説

フタルイミド
フタルイミド
phthalimide

1,2-benzenedicarboximide.C8H5NO2(147.13).無水フタル酸をアンモニアあるいは炭酸アンモニウムなどと加熱して,イミド化によってつくられる.また,フタルアミドやフタル酸アンモニウムから脱水によっても得られる.昇華性針状晶.融点233~235 ℃.熱酢酸,アルカリ水溶液などに可溶,ベンゼン,エタノールなどに難溶.NHの水素はプロトン性が強く,容易にN-アルカリ金属塩をつくる.これにハロゲン化アルキルを反応させると,種々のN-アルキル誘導体をつくることができ,このことは第一級アミンの合成に利用される.そのほか,N-アルカリ金属塩にハロゲンを作用させるとN-ハロゲン化合物も得られる.また,次亜塩素酸を作用させると,ベックマン転位反応によりアントラニル酸になる.染料,顔料の原料として用いられる.[CAS 85-41-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フタルイミド」の意味・わかりやすい解説

フタルイミド
phthalimide

フタル酸のイミド。化学式 C6H4(CO)2NH 。昇華性のある結晶。融点 238℃。冷水に微溶,熱エチルアルコールに可溶。イミド基の水素原子はエチルアルコール中で水酸化カリウムと反応して置換され,フタルイミドカリウムを生成する。これにハロゲン化アルキルを作用させると生成する N -アルキルフタルイミドを加水分解して,第一アミンを合成することができる (ガブリエル合成) 。

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