日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンコウチョウ」の意味・わかりやすい解説
サンコウチョウ
さんこうちょう / 三光鳥
black paradise flycatcher
[学] Terpsiphone atrocaudata
鳥綱スズメ目ヒタキ科カササギヒタキ亜科の鳥。雄のさえずりが「ツキヒホシ(月日星)ホイホイホイ」と聞こえるというので、この名がある。この亜科の鳥は、おもに南アジアからオーストラリアにかけて、またアフリカの熱帯林にすみ、約90種がある。樹冠の下でヒタキ型の採食法をとり、嘴(くちばし)は基部が幅広く扁平(へんぺい)で、先端は下に鉤(かぎ)形に曲がり、周りのひげが目だつ。サンコウチョウは、同じ属のカワリサンコウチョウとともに北に分布している鳥で、日本の本州から屋久(やく)島までは夏鳥として、奄美(あまみ)大島以南の南西諸島および台湾、バタン諸島には留鳥として分布する。本州などのものは東南アジアで越冬する。雄は尾が長く全長約45センチメートルのうち4分の3を占める。その尾と頭部から胸にかけて紫黒色、背は赤紫色、腹は白い。目の周囲はコバルト色をしている。雌は全長約17センチメートル、色は雄に似るが、背と尾は赤褐色である。平地の暗い林にすみ、長い尾を翻しながら空中で昆虫をとる。細い木の叉(また)に巣をかけ、4個の卵を産む。雌雄で抱卵し育雛(いくすう)する。
[竹下信雄]