サンジル(その他表記)Saint-Gilles

デジタル大辞泉 「サンジル」の意味・読み・例文・類語

サン‐ジル(Saint-Gilles)

フランス南部、ガール県の都市、ニーム近郊にある町。正式名称はサンジル‐デュ‐ガール。7世紀後半に隠遁生活を送った聖ジルの聖遺骨を納めたサンジル‐デュ‐ガール旧大修道院付属教会があり、その正面入口彫刻ロマネスク様式傑作として知られる。同教会はサンティアゴ‐デ‐コンポステラの巡礼路の一部として世界遺産(文化遺産)に登録された。

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改訂新版 世界大百科事典 「サンジル」の意味・わかりやすい解説

サン・ジル
Saint-Gilles

フランス南部,ガール県の町。ローヌ川下流と地中海岸セートを結ぶ運河に臨む。人口約7000。同名の修道院の門前町として発達し,一時遠近から巡礼を集めた。修道院の設立者,聖ジル(アエギディウス)について確実なことはほとんど知られていない。8~9世紀にギリシアに生まれたという。ある日,発心して家財を捨て,小舟に身を託して地中海に出たところ,この地に漂着した。山中で鹿とともに起居して苦行を続け,多くの奇跡を現した。やがて,その高徳を慕う者が集り住んで修道院が設立され,彼は初代院長となった。ローマ教皇が修道院のために寄進した門扉2枚は,聖ジルがローマのテベレ川に投じたところ,過たず修道院の前に打ち上げられた。これは聖ジル伝説のあらましだが,典型的な隠者型の聖人である。サン・ジル巡礼の最盛期は12世紀だが,かなり古くから北フランスやドイツから巡礼が来ていた形跡がある。特に突発的な事故や危険に対する加護の霊験で尊崇された。12世紀,壮大な伽藍造営が着手されたが,その後困難に見舞われて完成にいたらず,のみならず宗教戦争や大革命の渦中で破壊される部分も生じた。現存するのはかつての大修道院の残骸にすぎないが,それでも巨大なロマネスク建築である。正面の三つの入口,およびそこに配置されたキリストの生涯に題材を得た彫刻群は,ロマネスク美術の逸品とされている。また,長さ50m,幅25mの大地下祭室も遺構をとどめている。
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