日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザッキン」の意味・わかりやすい解説
ザッキン
ざっきん
Ossip Zadkin
(1890―1967)
フランスの彫刻家。ロシアのスモレンスクに生まれ、主としてフランスで制作活動し、1921年フランス国籍を取得した。最初ロンドンの工芸学校に、ついで1909年パリの美術学校に学ぶが、半年で退学。15年ころより黒人彫刻とキュビスムの影響下に、対象を面に分解・再構成した作品を制作するが、彼の叙情的素質は、厳密な幾何学的構成になじまず、20年ころからはより有機的・力動的な形態とキュビスム風の構成を一体化する。その後、彼の表現はいっそうバロック的、表現的となり、複雑な形態の組合せ、随所に設けられた空隙(くうげき)部などによって動的な世界を示した。第二次世界大戦中に制作された『囚人』(1943)、あるいは連作としてさまざまなバリエーションをもつ『オルフェウス』、ドイツ軍爆撃による死者たちのためのロッテルダム市の記念碑『破壊された都市』(1953)などが代表作。
[中山公男]