改訂新版 世界大百科事典 「シャン族」の意味・わかりやすい解説
シャン族 (シャンぞく)
Shan
インドのアッサム地方から上ミャンマーを経て中国雲南省にかけて分布するタイ系諸族の一支族。中国では白夷または擺夷と記されてきた。雲南省には彼らの自治を認めたシーサンパンナ(西双版納)タイ(溙)族自治州が設けられている。上ミャンマーのシャン高原のシャン族は,タイ・ヤイTai Yaiと自称しているが,これが狭義のシャン族である。12~16世紀には多数の土侯国を形成していたが,その後ビルマ王国に服属し,現在は自治州の連合体を構成している。サオパsaohpaと呼ばれる土侯国の首長の権限は強大で,平民は貢納,賦役,兵役の義務が課せられ,封建的な階層秩序が成立していた。この土侯支配は現在でも続いている。シャン族は杭上家屋をつくって河川流域に定着し,水田稲作を営んでいる。平民レベルでは親族は双系的に組織されていて,核家族以上の集団はない。しかし,土侯レベルでは,地位の継承,財産の相続等に父系制が採用されている。ビルマ系の上座部仏教(小乗仏教)が信仰されていて,男子が10~12歳の間に見習僧になることが社会規範になっている。一方,個人に宿る霊魂クワンや,精霊ピーも信じられていて,これらに関係する儀礼が発達している。かつて男子は14歳になると入墨を施されていたが,これは護呪の意味をもつばかりでなく,結婚をするための条件にもなっていた。
執筆者:小野沢 正喜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報