改訂新版 世界大百科事典 「シュモクドリ」の意味・わかりやすい解説
シュモクドリ
hammerhead
hammerkop
Scopus umbretta
コウノトリ目シュモクドリ科の鳥。この科はシュモクドリ1種だけからなる。全長約52cm。全身チョコレート褐色の風変りな渉禽(しようきん)で,後頭に長い房状の冠羽のあるのが特徴。くちばしは長く,左右に扁平で,先端が少しかぎ状に曲がる。英名は,くちばしと冠羽がくびに対してほぼ直角に位置し,くびを柄としたハンマーの頭のように見えることに由来する。和名もこれを撞木に見たてたもの。サハラ以南のアフリカ,アラビア南西部,マダガスカルに留鳥として生息する。湖畔,川岸,湿地,マングローブ沼,潟湖などに単独かつがいですみ,大きな群れをつくることは少ない。原住民は,この鳥をいじめると不幸を招くと信じていて,殺したりしないので,村の近くでもよく見かける。また,カバの背の上で休んでいることもある。食物は小魚,カエル,そのほか水生の昆虫類や小動物である。餌は早朝や夕方に浅い水中を歩きながらあさる。シュモクドリは,直径1.2mに及ぶ大きな球形の巣をつくることで有名である。この巣は,地上5~10mの木のまたの上に,小枝を泥や牛糞で堅固に固めてつくられ,横に小さな出入口が一つ開いている。多くのつがいはそのテリトリー内に数個の巣をもっているが,繁殖やねぐらに利用するのはそのうちの1個だけである。1腹の卵は3~7個,抱卵期間は約30日,抱卵,育雛(いくすう)は雌雄交代であたる。雛はもっぱらオタマジャクシで育てられるという。この鳥の類縁関係はまだよくわかっていない。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報