フランスの作家ユゴーの小説《レ・ミゼラブル》(1862)の主人公。貧しい職人ジャン・バルジャンは,飢えに泣く姉のこどもたちを救おうとしてパンを盗んだために投獄される。彼は社会に対する深い憎悪を抱いて出所するが,数日後ミリエルという司教から兄弟のように遇されて,その良心がめざめる。その後彼はある町に工業を興してこの町を豊かで清潔なものにする。また数々の辛苦や危険を乗りこえて,不幸な売笑婦の幼い娘コゼットを育て清廉な青年マリユスと結婚させるなど,わが身を犠牲にして人々のために尽くし,ミリエル司教の教えを実践して聖者のように死んでゆく。ジャン・バルジャンは,誤った社会の掟に蹂躙されながらも,これをはね返して自己を解放してゆく民衆のシンボルとして描かれている。心理描写の不足を批判されることもあるが,作者が志した叙事詩的小説《レ・ミゼラブル》の精神を代表する主人公として,きわめて詩的で壮大な姿に描かれている。
執筆者:辻 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1862年出版。貧しさと飢えに苦しむ甥たちを救おうとしてパンを盗んだために,19年間も獄中生活を送ったジャン・バルジャンは,社会に対する激しい憎しみを抱いて出獄する。だが,やがて神のようなミリエル司教の慈愛に触れて愛の精神にめざめ,それ以後不幸な人々を救う人類愛の具現者となる。…
※「ジャンバルジャン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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