ジョッキ(読み)じょっき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョッキ」の意味・わかりやすい解説

ジョッキ
じょっき

主としてビールを飲むのに用いられる、取っ手のついた大型の水差し状の容器。ジャッグjugが訛(なま)ったともいわれる。ジャッグとは、広口の水差し、瓶、あるいは取っ手付きの瓶、といった容器の意味で、これがビール用の容器の名前になったようである。マグともいう。ビールが庶民にも飲まれるようになった中世ごろから一般化したが、それまでは一部の高貴な人の間でのみ用いられていた。ジョッキ材料には、古くからいろいろなものがくふうされ、木、竹、陶磁器象牙(ぞうげ)、銀、ピュータ(錫(すず)と鉛の合金)、ガラスなど種々のものがあげられる。ビールが中世以前の上流階級の飲み物であったときには銀が主流であったが、庶民もビールを飲むようになった中世以降では、銀に似てはいるがより安価なピュータのジョッキが普及した。また13世紀には、サルトグレーズとよばれる、焼き上げるときに岩塩を炉に加えてつくる非常に硬質の陶製のものが現れた。陶製のものは、凝った装飾が施されて国々の特徴がよく表され、僧侶(そうりょ)や寺院のデザインのほか、とくに海洋国のオランダでは船の柄(がら)が、ドイツでは肖像画や紋章が多く描かれた。

 ビールは、空気に触れると酸化が進んで風味が落ちたり、温度が上昇してしまうので、蓋(ふた)付きのジョッキのほうが適している。また容器のデザインとともに、その材料の性質や、ビールの冷たさを蓋を利用して保つなど、おいしく飲めるようにくふうされている。容量は0.2~1リットルくらいまでいろいろあるが、一般的には0.5リットル内外のものが多い。

河野友美

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョッキ」の意味・わかりやすい解説

ジョッキ
jug

飲み物を入れる容器で片方取手のついたもの。日本ではドイツのビーアクルーク Bierkrugがジョッキとして最初に紹介されたため,もっぱらビール用のものをさす。ガラス製,陶製,金属製,プラスチック製や漆器のものなどがある。

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