ストレステスト(読み)すとれすてすと(英語表記)stress test

翻訳|stress test

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストレステスト」の意味・わかりやすい解説

ストレステスト
すとれすてすと
stress test

天災や大事故など、組織や企業、設備・システムなどに大きな負荷(ストレス)がかかる状況を想定し、安全性や耐久性を維持できるかどうか点検するリスク管理手法。耐久性調査、耐性評価などともよばれる。もともと電気・機械製品の品質管理に使われた用語であるが、金融や原子力発電所などの分野で広く使われるようになった。

(1)電気・機械分野のストレステスト 電気・機械製品や同部品に、利用時の想定(定規格)以上の温度圧力湿度電圧電流周波数振動速度重量などの負荷をかけ、正常にきちんと利用できるかどうかを調べる手法。IT分野ではソフトウェアハードウェアに、想定より多いデータ量、接続先、通信量などの負荷を一度にかけ、システムが安定的に動作するかどうかを調べる。

(2)金融のストレステスト 資産査定ともいう。2008年のリーマン・ショック後、金融システム危機に耐えられる健全資産を銀行などの金融機関が保有しているかどうかを調べる手法として一般に使われるようになった。10年、20年に一度の金融システム不安が生じた際、株式、債券為替(かわせ)相場がどの程度変動するかを予測し、損失額や資本不足額を試算し、金融危機に備えるねらいがある。金融機関の資本増強を促すと当時に、資産の透明性を高める効果もある。

(3)原子力発電所のストレステスト 2011年(平成23)の福島第一原子力発電所事故後、天災やテロ攻撃、飛行機墜落事故などに対し原発がどこまで耐えられるかを調べる手法として広く使われている。原発が事故などを起こす限界までの「余裕度」を調べ、弱点を明らかにし、補強につなげるねらいがある。安全基準を上回る過酷な状況をコンピュータ・シミュレーションでつくりだし、建屋(たてや)や機器の耐久性を調べる。机上計算によって評価するので、テストのために原子炉を止める必要はない。福島第一原発の事故後、ヨーロッパ連合EU)がストレステストの実施を決め、国際原子力機関IAEA)閣僚会合も原発を保有するすべての国が実施するよう決定した。日本では定期点検中の原発に簡易版ストレステストを実施し、合格を原発再稼働の前提条件の一つとしている。さらにその後、本格的ストレステストを全原発に実施し、必要に応じて停止命令を出すという2段階方式をとっている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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