ストレステスト(読み)すとれすてすと(英語表記)stress test

翻訳|stress test

デジタル大辞泉 「ストレステスト」の意味・読み・例文・類語

ストレス‐テスト(stress test)

ある製品・材料・構造物・システムなどが、滅多に起こらない事態で生じる大きな負荷にどの程度耐え、安全性にどの程度の余裕があるかを調べる試験。耐久試験。耐力試験。安全性評価。
金融市場で、通常では考えられないほどの大幅な価格変動などを想定し、その回避策やポートフォリオの損失額を予測しておくこと。
コンピューターハードウエアソフトウエアに対して行う機能テストの一。大量のデータを処理させるなどの高い負荷をかけ、正常に機能するかどうかを調べる。一般にサーバーなどの高い信頼性を必要とするシステムに用いられる。負荷テスト

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「ストレステスト」の解説

ストレステスト

金融機関が経済情勢の変化に対し、どの程度の耐性を備えているか、監督当局が評価する手法。2008年の金融危機以後、リスクを包括的に管理する手法として本格的に広がった。気候変動対象としたストレステストは、英中央銀行のイングランド銀行(BOE)が21年6月に、欧州中央銀行(ECB)が22年に実施すると公表している。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストレステスト」の意味・わかりやすい解説

ストレステスト
すとれすてすと
stress test

天災や大事故など、組織や企業、設備・システムなどに大きな負荷(ストレス)がかかる状況を想定し、安全性や耐久性を維持できるかどうか点検するリスク管理手法。耐久性調査、耐性評価などともよばれる。もともと電気・機械製品の品質管理に使われた用語であるが、金融や原子力発電所などの分野で広く使われるようになった。

(1)電気・機械分野のストレステスト 電気・機械製品や同部品に、利用時の想定(定規格)以上の温度、圧力、湿度、電圧、電流、周波数、振動、速度、重量などの負荷をかけ、正常にきちんと利用できるかどうかを調べる手法。IT分野ではソフトウェアハードウェアに、想定より多いデータ量、接続先、通信量などの負荷を一度にかけ、システムが安定的に動作するかどうかを調べる。

(2)金融のストレステスト 資産査定ともいう。2008年のリーマン・ショック後、金融システム危機に耐えられる健全資産を銀行などの金融機関が保有しているかどうかを調べる手法として一般に使われるようになった。10年、20年に一度の金融システム不安が生じた際、株式、債券、為替(かわせ)相場がどの程度変動するかを予測し、損失額や資本不足額を試算し、金融危機に備えるねらいがある。金融機関の資本増強を促すと当時に、資産の透明性を高める効果もある。

(3)原子力発電所のストレステスト 2011年(平成23)の福島第一原子力発電所事故後、天災やテロ攻撃、飛行機墜落事故などに対し原発がどこまで耐えられるかを調べる手法として広く使われている。原発が事故などを起こす限界までの「余裕度」を調べ、弱点を明らかにし、補強につなげるねらいがある。安全基準を上回る過酷な状況をコンピュータ・シミュレーションでつくりだし、建屋(たてや)や機器の耐久性を調べる。机上計算によって評価するので、テストのために原子炉を止める必要はない。福島第一原発の事故後、ヨーロッパ連合(EU)がストレステストの実施を決め、国際原子力機関(IAEA)閣僚会合も原発を保有するすべての国が実施するよう決定した。日本では定期点検中の原発に簡易版ストレステストを実施し、合格を原発再稼働の前提条件の一つとしている。さらにその後、本格的ストレステストを全原発に実施し、必要に応じて停止命令を出すという2段階方式をとっている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「ストレステスト」の解説

ストレステスト

過剰な負荷をかけることで弱点や瑕疵(かし)を調べる手法の一つ。金融機関の経営などが、健全で安定した状態であるかどうかについて確認するもので、健全性検査ともいう。金融市場における不測の事態に備え、危険性を予測し、回避策やポートフォリオの損失額を予測する検査である。
ストレステストは元来、コンピューターシステムなどについての負荷検査や、金融市場のリスク管理手法のことを言う。2009年に米国金融当局が実施した、大手金融機関の資産の健全性を調べる検査を「ストレステスト」と称したことから、金融機関の経営の健全性検査についての用語として一般化した。基本的な方法は、通常では考えられない大幅な通貨相場の変動や経済成長のマイナスなどを想定し、銀行の自己資本比率の低下などが想定される範囲に収まるかどうかを判断する。客観的な審査によって、市場の不安感を解消することが検査の基本目的である。しかしながら、ストレステストの結果が不合格の場合には、むしろ信用不安を煽(あお)りかねない。また、一般に検査の判断基準は事前には公開されない。これらにより、結果の意図的操作が行われている可能性が否定できないとの見方もある。
10年7月にCEBS(欧州銀行監視委員会)が行ったストレステストでは、欧州の金融機関91行のうち資金不足に陥るのは7行、それ以外はすべて健全であるとした。不合格の7行は、当該国の金融当局の監督下で公的資金注入による再建などがすでに進められている「当然にも不合格」と認められる金融機関のみであった。また、ギリシャ国債などについての損失率が少なめに見積もられているなど、審査基準が甘すぎるとの指摘もあった。さらに、CEBSの査定に対して、米国金融大手のシティグループが独自に行った試算では91行のうち、24行が不合格であるとの結果も報告されている。ストレステストを信頼性のある手法としていくにあたって、負荷の妥当性や標準化、客観性など、多くの課題が今後に残されている。

(金谷俊秀  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「ストレステスト」の意味・わかりやすい解説

ストレステスト

ストレスとは負荷を意味する。システムに通常以上の負荷をかけて正常に動作するか,隠れたリスクはないかなどを調べる手法のこと。金融,建築,コンピューター,医学などさまざまな分野で用いられるが,この言葉は一般的となったのは,福島第一原発事故を受けて日本やEU内で独自に原子力発電所のストレステストを行うこととしたためである。日本では経産省が原子力発電所の再稼働と連動させて実施を電力会社に指示。しかしストレステストはコンピューターシミュレーションにより評価するものであり,原発のような巨大事故を招く可能性のあるシステムのリスク評価に実効性があるかどうか,疑問や批判が相次いでいる。
→関連項目伊方原発枝野幸男大飯原発

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

IT用語がわかる辞典 「ストレステスト」の解説

ストレステスト【stress test】

負荷テスト。⇒負荷テスト

出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android