大飯原発(読み)おおいげんぱつ

共同通信ニュース用語解説 「大飯原発」の解説

大飯原発

関西電力が福井県おおい町に持つ加圧水型軽水炉の1~4号機。東京電力福島第1原発事故後に全国の原発が停止する中、3、4号機は当時の民主党政権が決めた暫定基準に基づき2012年7月に再稼働した。定期検査で停止した後、新規制基準に合格し、3号機は今年3月、4号機は5月に改めて運転を再開。地元住民らが3、4号機の運転差し止めを求めた訴訟では、福井地裁が14年5月、運転を認めない判決を言い渡したが、名古屋高裁金沢支部が18年7月に住民敗訴の逆転判決を出した。

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百科事典マイペディア 「大飯原発」の意味・わかりやすい解説

大飯原発【おおいげんぱつ】

関西電力,大飯原子力発電所。福井県大飯郡あおい町。若狭湾に面する。柏崎刈羽原発福島第一原発(事故により廃炉決定)に次ぐ,日本第3位の発電量。半径20km内に,高浜発電所がある。1〜4号機で,1号機,2号機は1979年,3号機は1991年,4号機は1993年の運転開始である。いずれも加圧型軽水炉。2011年3月の福島第一原発事故の際,すべての原子炉は定期点検中で稼働していない。関西電力は2012年夏の電力需要の逼迫(ひっぱく)を理由に,大飯原発の再稼働を強く要請した。福島第一原発事故後,国が課しているストレステストを3号機,4号機で実施し,原子力安全・保安院に提出,同院は〈妥当〉との審査書を2012年3月に原子力安全委員会に提出した。原子力安全委員会はただちに審査書の判断を妥当とした。これを受けて野田政権は3号機,4号機の再稼働を進める判断を下し,4月,福井県に対して再稼働を推進するよう促した。また,2012年5月に北海道電力・泊原発が定期点検に入ったことで,原発再稼働の見通しのないまま日本の原子力発電がすべて停止する状況となったため,エネルギー政策で危機感を強める野田政権が再稼働の政治判断を優先させたと批判された。大飯原発の安全性について専門家から疑問視する指摘が相次ぎ,福井県など地元自治体の世論も再稼働をめぐって分裂,さらに滋賀県,京都府,大阪府などの近隣自治体の首長も世論を背景に,関西電力と国の再稼働を是とする安全性の説明を批判し,再稼働に反対する意見を表明した。しかし,同年6月,橋下徹大阪市長,嘉田由紀子滋賀県知事らは,2012年夏の関西電力管内の電力需要の逼迫(ひっぱく)に配慮して,同年6月〈短期的再稼働〉という条件付きで反対を撤回,再稼働を容認する姿勢に転じた。2012年7月,3号機,4号機が発送電を開始,福島第一原発事故から再稼働したはじめての原発となった。2013年7月に施行された,原子力規制委員会の新規制基準では,過酷事故対策や地震・津波対策など厳しい基準が設定された。大飯原発についても,新規制基準にもとづく確認作業を実施。大飯原発沖には二つの活断層の存在が明らかとなっており,原発東側には熊川断層があって三つの活断層が連動する可能性を示す地下構造が地震学者によって指摘されているため,原子力規制委員会の地震学者島崎邦彦委員長代理は,3連動による地震動を前提とする対策を強く求めた。原子力規制委員会は2013年9月,原発の新規制基準への適合性を確かめる審査会合を開き,関西電力大飯原発3,4号機の審査を実施した。全交流電源喪失などの重大事故が起きた場合の対策や手順について,原子力規制委員会の審査担当者らが関西電力に対して確認した。大飯3,4号機は全国で唯一運転していたが,その後定期検査で停止,関西電力は定期検査後の早期再稼働を目指し,2013年7月の新規制基準施行当日に原子力規制委員会に審査を申請していた。しかし,原子力規制委員会は敷地内断層の調査が途中だとして審査を後回しにしていた。原子力規制委員会の外部専門家らが大飯の重要施設を横切る断層が〈活断層ではない〉との見解で一致したことを受け,審査を再開した。2014年5月,福井県民らが関西電力を相手取り,3,4号機の運転差し止めを求めている訴訟で福井地裁(樋口英明裁判長)は運転差し止めを命じる判決を言い渡した。関西電力側が控訴。控訴審は,名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)で進められている。
→関連項目嘉田由紀子

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知恵蔵 「大飯原発」の解説

大飯原発

福井県大飯郡おおい町にある関西電力所有の原子力発電所。若狭湾国定公園内にあり、加圧水型軽水炉(PWR) 4基を有する。4基合わせた総出力は471万キロワットあり、柏崎刈羽原子力発電所に次ぐ日本最大級の原子力発電所である。2014年5月、福井地裁で再稼働の差し止めを命じる判決が出された。
2011年3月の東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電の安全性が強く問われ、一時日本の全ての原子力発電所が停止していた。この状況を打ち破ったのが大飯発電所で、3号機は12年7月5日に、4号機は同21日に再稼働した。これにより電力が融通できたため、九州電力が計画停電を回避できたとする見方もある。3号機は13年9月2日に、4号機は同15日に定期検査に入り、14年6月現在、再び日本の原子力発電所は全て停止している。
関西電力は、大飯発電所の主要な設備は、徹底した地質調査や考えられる最大の地震に耐えられるように設計していると主張し、再稼働を目指す。関西電力によれば、発電所の地盤は地震による揺れが増幅される地層上ではなく、十分な支持性能を持つよう掘り下げているという。また、原子炉格納容器全体を締め付けておくことで事故時に発生する大きな圧力に耐える、プレストレストコンクリート製方式(PCCV) を3、4号機に採用するなど、格納容器は「現実には起こりえないであろう事故を想定した設計」であるとしている。
しかし、14年5月21日、福井地裁で大飯原発3、4号機の運転差し止めを求める訴訟の判決が出され、関電側に運転差し止めを命じた。福井県の住民ら189人から、安全性が保障されないまま再稼働させたと関電を訴えていたもので、耐震設計の目安となる地震の揺れである「基準地震動」を超える地震が発生するかどうかが争点となった。差し止め判決は東京電力福島第一原発の事故後初めてである。関西電力は福井地裁の判決を不服として22日、名古屋高裁金沢支部に控訴した。14年6月時点で、控訴により判決は確定していないため、法的には大飯原発をすぐに稼働させることも不可能ではない。

(金谷俊秀  ライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「大飯原発」の解説

大飯原発

関西電力が保有する最大の原子力発電所「大飯発電所」(発電量全国3位)の通称。1〜4号機があり、2011年の福島第一原子力発電所事故以後に、定期検査により全て停止した。12年、関西電力圏の夏の電力需要予測が厳しいものと推定され、その再稼働が問題となるが、同年4月6日、枝野経産相が事実上の安全宣言を行う。再稼働に向け反対派の大規模デモが総理官邸前、横浜、おおい町などで行われる中、7月1日に再稼働された。

(2012-07-02)

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