スナク（その他表記）Sunak, Rishi

デジタル大辞泉

スナク（Rishi Sunak）

［1980～ ］英国の政治家。首相。金融アナリストから政治家に転身。ジョンソン内閣では、財務大臣として新型コロナウイルス感染症対策などに尽力した。2022年、首相に就任。→スターマー

出典　小学館

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

スナク
Sunak, Rishi

[生]1980.5.12. イングランド，サウサンプトン
リシ・スナク。イギリスの政治家，投資家。首相（在任 2022～24）。不祥事続きのボリス・ジョンソン政権が 2022年7月に崩壊したあと，年内に行なわれた 2度目の与党保守党党首選挙に勝利し，10月に首相に就任した。イギリス史上初のアジア系（インド系）首相であり，42歳5ヵ月での首相就任は 20世紀以降のイギリスで最も若い。
インド系移民の家庭に生まれる。祖父母はインド北西部のパンジャブ地域の出身で東アフリカに移り住み，両親はそれぞれケニアとタンザニアで生まれ，移住先のイギリスで出会って結婚した。父はナショナル・ヘルス・サービスの一般開業医で，薬剤師の母は小さな薬局を切り盛りし，3人きょうだいの長兄であるスナクは店の帳簿をつけながら育った。名門パブリック・スクールのウィンチェスター・カレッジに入学し，そこでヘッドボーイ head boyと呼ばれる生徒代表に選ばれたほか，学校新聞の編集長も務めた。オックスフォード大学リンカーン・カレッジでは哲学，政治学，経済学を学び，クラブ活動を通じて金融市場や国際貿易を学ぶオックスフォード貿易・投資協会 Oxford Trading & Investment Societyで会長を務めた。またその頃，保守党本部でインターンシップを経験した。2001年に大学を卒業し，投資銀行ゴールドマン・サックスに就職，2004年までアナリストとして活躍した。その後，フルブライト奨学生としてアメリカ合衆国のスタンフォード大学に留学，経営学修士 MBAを取得した。2006年に帰国し，ヘッジファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド TCIに職を得て，2年後に創業者クリス・ホーンと共同経営者となった。2009年に TCIを退職し，同じくヘッジファンドのテリーム・パートナーズを共同設立，同年スタンフォード大学在学中に知り合った，インドの巨大テクノロジー企業インフォシス・テクノロジーズの共同創業者ナラヤン・ムルティーの娘アクシャタと結婚。ビジネスでの成功に加え，妻が 0.91%保有するインフォシスの株もあり，巨額の富を築いた。
2010年保守党で働き始め，おもに党のシンクタンクで活躍したのち，2014年に保守党の票田ともいえるノースヨークシャー県リッチモンド選出の下院議員候補となり，2015年5月に当選した。ヨーロッパ連合 EU懐疑論者であるスナクは，イギリスの EU離脱問題（ブレグジット Brexit）をめぐって離脱を支持した。2015～17年環境・食糧・農林特別委員会委員およびビジネス・エネルギー・産業戦略省政務秘書官。2018年1月，住宅・共同体・地方行政担当国務大臣として初入閣。2019年7月に誕生したジョンソン政権下で財務副大臣に，2020年2月にはジョンソンと対立して辞任したザジド・ジャビドの後任財務大臣に史上 4番目の若さとなる 39歳で就任した。その後，世界的に流行した新型コロナウイルス感染症（→COVID-19）対策として，企業への緊急支援や国民への生活補助金など広範な支援策を次々と打ち出し，スナク自身の落ち着きのある雰囲気や言動も相まって高い評価や支持を得るようになった。
2022年4月，インド国籍の妻がイギリス非定住者の立場を利用して合法的ではあるもの海外所得の納税を免れていたこと，スナク自身が 2021年10月までアメリカ永住権（グリーンカード）を保持していたことが問題視された。また，ジョンソン首相がコロナ禍のロックダウン（都市封鎖）中に首相官邸で開いたパーティにスナクも出席していたことが明らかになり罰金が科された。2022年7月5日，先のパーティ問題や党内人事をめぐる対応などで激しい非難にさらされ，窮地に立たされたジョンソン首相を見かぎるかたちで財務大臣を辞任。ジョンソン辞任をうけて行なわれた保守党党首選挙で，スナクは立候補者 8人のうちの一人となり，9月5日の決選投票でリズ・トラス外務大臣に敗れた。ところが，トラス首相がわずか在任 45日で辞任に追い込まれ，10月24日の党首選挙にただ一人立候補して無投票で当選，翌 25日首相に就任した。

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