セリーヌ(英語表記)Louis-Ferdinand Céline

デジタル大辞泉 「セリーヌ」の意味・読み・例文・類語

セリーヌ(Louis-Ferdinand Céline)

[1894~1961]フランス小説家。第一次大戦後世界の悪意と人間の悲惨を描いた作品で物議をかもす。のち、反ユダヤ主義の著作を発表し、第二次大戦後に戦犯の罪に問われた。作「夜の果てへの旅」「城から城」「」など。

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精選版 日本国語大辞典 「セリーヌ」の意味・読み・例文・類語

セリーヌ

  1. ( Louis-Ferdinand Céline ルイ=フェルディナン━ ) 小説家。反逆的、風刺的小説を発表。その反ユダヤ思想でフランスを追われる。代表作「夜の果てへの旅」「なしくずしの死」。(一八九四‐一九六一

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改訂新版 世界大百科事典 「セリーヌ」の意味・わかりやすい解説

セリーヌ
Louis-Ferdinand Céline
生没年:1894-1961

フランスの作家。本業は医師。パリの場末町に生まれ育ち,苦学して学校に通い,医師の資格を手に入れた。第1次大戦勃発と同時に志願入隊,戦場での体験がもとで強い反戦思想を植えつけられる。復員後,国際連盟事務局に就職し,衛生事情視察のため,各地を遍歴。作家として名を成した後も,終生医業を続けた。

 1932年,実生活の体験にもとづく自伝的小説,《夜の果ての旅》を発表。反社会的な内容と,大胆に俗語を駆使した革新的文体によって,賛否両論の大反響を巻き起こし,一躍世界的な有名作家となる。この処女作は作者の分身バルダミュ医師の独白のかたちで展開する叙事詩的遍歴譚で,人間社会の冷酷・不正に対して,激越な呪詛罵倒が,全編ところかまわず嘔吐のようにまき散らかされている。つづいて36年に発表された《なしくずしの死》は,同一主人公が登場する自伝的連作である。同年,セリーヌはソビエト政府の招待に応じてロシアへ旅行したが,帰国後,猛烈な反コミュニズム文書《懺悔》(1936)を発表,徹底したアナーキズム的立場を明確にする。この姿勢は,警世的な〈時事論文三部作〉の中でも受け継がれ,《虫けらどもをひねりつぶせ》(1937),《死体派》(1938),《にっちもさっちも》(1941)において,反戦・反ユダヤ・反資本主義の立場から,フランスの現状に対して歯に衣着せぬ痛罵が浴びせられる。これらの著作が災いして,政治には関与しなかったにもかかわらず,第2次大戦後セリーヌは戦犯の罪に問われ,ドイツ軍と行を共にしたあと,デンマークへ亡命,その地で逮捕,投獄欠席裁判において,資産没収,終身禁錮の刑を宣告される。51年,特赦によって帰国。再び作家活動を始めるが,ジャーナリズムから故意に黙殺され,貧窮と失意のうちに世を去った。戦後の代表作に,悲惨な亡命生活を物語った三部作《城から城》(1957),《北》(1960),《リゴドン》(1961)などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セリーヌ」の意味・わかりやすい解説

セリーヌ
せりーぬ
Louis-Ferdinand Céline
(1894―1961)

フランスの小説家。18歳で志願入隊して第一次世界大戦で負傷。除隊後、林業会社の駐在員としてアフリカに渡るが、風土病を得て1年で帰国。独学で大学入学資格(バカロレア)をとり、医学を修めて学位を得、国際連盟衛生局に入り、世界各地の視察旅行に数年を過ごしたのち、パリ場末の貧民街開業した。かたわら、戦争以来の体験をもとに書いた『夜の果てへの旅』(1932)が、大胆な口語表現と徹底したペシミズムとなによりも奇抜な物語で読者に大きな衝撃を与え、一躍作家としての地位を築いた。同じ主人公の少年時代を扱った『なしくずしの死』(1936)は、いっそうの大胆さで世界の悪意と人間の悲惨を描き、ために良俗派の攻撃にあいつつも、前作に勝る反響をよんだ。

 しかし第二次大戦の接近とともに、性急な反戦主義から、戦争原因をユダヤ人にみて、『皆殺しのための戯(ざ)れ言(ごと)』Bagatelles pour un massacre(1937)など一連の狂気じみた反ユダヤ文書を発表、ドイツとの同盟を唱えてナチスの協力者とみなされ、ドイツの敗色が濃くなると占領下のパリを脱出、デンマークに逃れ、7年の亡命生活を送った。帰国後、亡命中の体験を描いた『城から城』(1957)で、ふたたび大きな反響をよんだ。『北』(1960)、『リゴドン』(1969年没後刊)がこれに続く。没後も彼の評価は高まる一方である。セリーヌの描く現代の地獄絵には、人間の悲惨への深い共感と相まって、一種予言的な世界が感じられる。かといって、その人種差別の犯罪も忘れてはなるまい。彼はまた、生涯「生きた書きことば」の完成を追求した文体家でもあった。

[高坂和彦]

『高坂和彦他訳『セリーヌの作品』全14巻(1978~85・国書刊行会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セリーヌ」の意味・わかりやすい解説

セリーヌ
Céline, Louis-Ferdinand

[生]1894.5.27. パリ近郊クールブボア
[没]1961.7.1. パリ近郊ムドン
フランスの小説家。本名 Louis-Ferdinand Destouches。貧しい家庭に生まれ,医学校に在学中,第1次世界大戦に参加,重傷を負ったのち,海外を放浪。帰国後パリの場末で医師を開業。第一作『夜の果てへの旅』 Voyage au bout de la nuit (1932) で一躍有名になった。絶望的ペシミズムと狂暴な個人主義に彩られたこの作品は,存在に対する嫌悪感を卑俗な会話体で記述し,小説に新しい可能性を開いた。 1937年アナーキズムと反ユダヤ主義による激越な論調のパンフレットを発表。 1944年ドイツ軍敗走と行をともにし,第2次世界大戦後デンマークで投獄され,その後も亡命を余儀なくされた。 1951年特赦により帰国。文壇から黙殺され貧窮のうちに死んだが,その後作品に対する全面的再評価が行なわれた。作品には,『なしくずしの死』 Mort à crédit (1936) ,亡命生活を扱った3部作『城から城』D'un château l'autre (1957) ,『北』 Nord (1960) ,『リゴドン』 Rigodon (1969) など。

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百科事典マイペディア 「セリーヌ」の意味・わかりやすい解説

セリーヌ

フランスの作家。本名Louis Ferdinand Destouches。貧困のため独学で医師となる。第1次大戦で重傷を負うとともに,強い反戦思想を植えつけられ,のちパリで貧民のための医者として一生を送る。その苦悩の体験から小説《夜の果てへの旅》(1932年)を発表,俗語をまじえた反社会的・実存主義的内容で反響を呼んだ。ほかに《なしくずしの死》(1936年),《城から城》(1957年),《北》,評論集《虫けらどもをひねりつぶせ》(1937年)等。反ユダヤ・親独派とされ第2次大戦後投獄されたこともあり,ジャーナリズムから無視され,貧困と失意のうちに死去した。

セリーヌ

1946年セリーヌとリシャールのビピアナ夫妻によって設立されたフランスの皮革製品,アクセサリー既製服の製造・販売店。1958年馬具風飾りのついたモカシンを発表,一躍世に知られる。1971年チェーン模様のブラウスを発表,この図柄はスカーフや婦人服にも表されセリーヌの定番となった。馬車マークのバックルのついたベルトも有名。1987年以降は国際的なグループに入り,販売網を強化している。

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