一般には,ある人が欠席している会合でその人に関する,どちらかといえば不利になる事柄を決めることをいうが,元来は裁判用語で,訴訟当事者が欠席したことからただちにその者の不利に言い渡される裁判または被告人欠席のままでなされる裁判のこと。
民事訴訟では訴訟当事者が口頭で主張したことだけを裁判の基礎とすることができ(口頭主義),書面を出しておいてもその内容を口頭で主張しない限り,裁判の基礎にすることはできない。しかし,だからといって当事者が欠席すれば裁判が進められないということではこまる。そこで,当事者欠席の場合の対策として,1890年公布の旧民事訴訟法は,当事者の一方が口頭弁論期日に欠席すると,従前の弁論の状態のいかんを問わず,出席当事者の主張のみに基づいて欠席者敗訴の判決をすることができるとした。これを欠席判決といった。その代り,欠席者には同一の裁判所に〈故障〉という不服申立てを許し,この申立てがあると訴訟は欠席前の状態に復するものとしていた(246~265条)。しかし,訴訟の引延ばしのために用いられたので,1926年の大改正においてこれを全廃し,以後は,当事者の一方が最初の口頭弁論期日に欠席した場合には,その者があらかじめ提出した訴状,答弁書その他の準備書面の内容を陳述したものとみなし,次回以降の期日に欠席した場合には相手方の主張をそのまま認めたものとみなして,これらを出席者の弁論と突き合わせて判決するものとしている(民事訴訟法158条,159条3項)。
執筆者:青山 善充
刑事訴訟においては,被告人が出頭しないときは,原則として,公判を開くことができない(刑事訴訟法286条)。ただ,この原則にはいくつかの例外がある。第1に,刑法,〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉〈経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律〉の罪で50万円以下(またはその他の罪で5万円以下)の罰金または科料にあたる事件については,被告人は公判に出頭することを要しない(284条)。第2に,拘留にあたる事件の被告人は,判決の宣告期日を除き,また,長期3年以下の懲役,禁錮または第1の場合の限度額を超える罰金にあたる事件の被告人は,冒頭手続および判決の宣告期日を除き,いずれも,裁判所の許可を得て公判に出頭しないことができる(285条)。第3に,それ以外の場合においても,勾留されている被告人が,公判期日に召喚を受け,正当な理由がなく出頭を拒否し,監獄官吏による引致を著しく困難にしたときは,被告人の出頭がなくても,公判の手続を行うことができる(286条の2)。第4に,被告人が許可なく退廷し,または,法廷の秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときも,被告人不在のまま公判審理を行い,判決をすることができる(341条)。
被告人が不在でも,弁護人が在廷すれば,防御に著しい支障を生じないかもしれないが,弁護人がいないか,いても出頭しないときは,訴訟のうえで事実上種々の不利益を受けることは避けられない。法律上も,被告人が出頭しなくても証拠調べを行うことができる場合において,被告人および弁護人・代理人が出頭しないときは,伝聞証拠を証拠とすることに同意したものとみなされる(326条2項)など,不利な効果が生ずる(この同意擬制の効果は,みずからの意思による欠席ないし退廷の場合のみならず,裁判長の命令による退廷の場合にも認められるというのが,最高裁の判例である)。なお,〈略式手続〉の項参照。
執筆者:井上 正仁
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被告人欠席のまま行える裁判。現行刑事訴訟法は、原則として、被告人の公判期日への出頭を要求している(286条)。例外としては、法人被告人の場合(283条)のほか、軽微事件であって出頭が免除される場合(284条、285条)、心神喪失の場合(314条1項)、出頭拒否、無断退廷、退廷命令の場合(286条の2、341条)、上訴審の場合(390条、409条)などがある。
[大出良知]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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