その他の水溶性ビタミンと代謝異常(読み)そのほかのすいようせいびたみんとたいしゃいじょう

家庭医学館 の解説

そのほかのすいようせいびたみんとたいしゃいじょう【その他の水溶性ビタミンと代謝異常】

 水溶性ビタミンには、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6ナイアシンパントテン酸ビオチン葉酸(ようさん)、ビタミンB12などのB群のほかに、ビタミンCがあります。これらは、水に溶けやすいので、摂取しすぎても過剰症をおこすことはありませんが、不足するとビタミン欠乏症をおこします。
◎ナイアシン欠乏症(ペラグラ
 ナイアシン(ニコチン酸)は、多くの酸化還元反応の補酵素(ほこうそ)として、エネルギー代謝に関与するビタミンです。
 体内で必須(ひっす)アミノ酸の1つであるトリプトファンから合成されますので、肉、魚、卵、牛乳などの動物性たんぱく質をふつうに摂取していれば、欠乏症になることはありません。
 ナイアシンが欠乏すると、皮膚、消化器、精神・神経が障害されるペラグラという病気になります。
 ペラグラの症状は、日光に当たると発赤(ほっせき)・色素沈着・潰瘍かいよう)などが現われるペラグラ皮膚炎(ひふえん)、口内炎(こうないえん)・舌炎(ぜつえん)、胃の無酸症・腸炎(ちょうえん)・下痢げり)などの消化器症状、頭痛・めまい・不眠症・抑うつなどの精神症状がおこります。重症になると幻覚や認知症をともなうこともあります。
 治療には、ナイアシンの服用と同時に、ほかのビタミンも補給します。
葉酸欠乏症(ようさんけつぼうしょう)
 葉酸は、赤血球(せっけっきゅう)や遺伝子をつくるのに必要なビタミンで、たんぱく質の合成にも関係しています。
 ふだんの食生活で不足することはありませんが、妊娠している女性やアルコール中毒の人では、欠乏することがありますので積極的に摂取しましょう。血液学的変化はビタミンB12欠乏の症状と類似しており、明確な区別がむずかしく、ビタミンB12欠乏をともなうことがよくあります。
 葉酸が欠乏すると、倦怠感(けんたいかん)、吐(は)き気(け)、下痢(げり)、動悸(どうき)などがみられる巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)(「巨赤芽球性貧血」)をおこします。
 治療は、葉酸の服用とともに、鉄分の補給にも注意します。
◎ビタミンC欠乏症(壊血病(かいけつびょう))
 ビタミンCは還元力の強いビタミンであり、生体内のいろいろな物質の酸化還元に関与することにより、体内で種々のはたらきをしています。また毛細血管の機能を正常に保つうえで重要な役割をはたしています。
 ビタミンCが不足すると、血管壁がもろくなり、皮下出血(ひかしゅっけつ)をおこしやすくなります。これは、骨格や血管などの結合組織の主成分であるコラーゲンの形成に、ビタミンCが関与しているからです。コラーゲンは、たんぱく質の一種で、骨の強化に役立ち、細胞間をしっかり固める作用があるので、傷の回復や止血に重要なはたらきをしています。コラーゲンに含まれるハイドロキシプローリンというアミノ酸の合成には、ビタミンCが必要なのです。
 かぜをひいたとき、興奮(こうふん)や緊張などのストレスが続いたときには、ビタミンCが多く消費されます。これは、かぜやストレスが続くとエピネフリンというホルモンが分泌(ぶんぴつ)されますが、このエピネフリンがつくられる過程でビタミンCが必要とされるからです。
 そのほか、毒物や薬物の中毒のときにもビタミンCの必要量がふえます。
 ビタミンCが欠乏すると、壊血病がおこります。壊血病の症状は、倦怠感、皮膚の蒼白(そうはく)や点状出血などです。やがて出血は、歯ぐき、皮下、粘膜(ねんまく)、筋肉、内臓などの毛細血管からおこり、腫(は)れ、痛みをともない、そのまま放置すると貧血状態になります。
 壊血病やその他の異常は、ビタミンCの使用で治ります。
 人工栄養児には、発育障害、骨の形成不全、血尿(けつにょう)・血便(けつべん)、皮膚の出血、貧血などをおこすメルレル・バロウ病(乳児壊血病(にゅうじかいけつびょう))がみられることがありますが、調整粉乳を使えば問題ありません。
 また、壊血病ではなくても潜在的にビタミンC欠乏状態の人が思いのほかいます。このような人は、ふだんからビタミンCを多く含む食品を食べるように心がけましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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