自然環境、貧困、高齢化社会、子育て支援などといったさまざまな社会的課題を市場としてとらえ、持続可能な経済活動を通して問題解決に取り組む事業のこと。このような社会的課題の解決を目的に事業を展開する組織や企業を社会的企業またはソーシャルベンチャーsocial ventureとよぶ。2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行(貧困層を対象とした小口金融)と創設者のユヌスがもっとも典型的な成功例とされる。このほかに、子供の識字能力の育成と教育における男女の格差是正を掲げ、開発途上国の子供たちの人生を変えることを目ざすNGO(非政府組織)のルーム・トゥ・リードRoom to Read(アメリカ)、ホームレスの社会復帰に貢献するために独自編集の雑誌を発行する社会志向型企業のビッグイシューThe Big Issue(イギリス)などがビジネスモデルとして有名である。
ソーシャルビジネスに通じる最初の動きは、1991年にイタリアで制定された法律により社会協同組合が規定されたことであったとされる。この法律では社会協同組合がどのような活動を行う法人なのかについて、「不利な状況に置かれた人々の労働参入を目的とする農業・工業・商業およびサービス等のさまざまな活動の展開」として定義されている。また、なんらかの理由で社会的に排除social exclusionされる人々に対する政策に力を入れてきたイギリスでは、2004年にコミュニティ利益会社(Community Interest Company、CICと略される)規定が設けられ、2005年にソーシャルビジネスに取り組む組織や企業に特化した法人形態が法制化された。2009年には約3000社の登録がみられる。アメリカにはLLC(Limited Liability Company、有限責任会社)に準じた法人格のL3C(Low-profit Limited Liability Company、低収益有限責任会社)が、イギリス同様の優遇制度として設けられている。日本には該当するような法人格がないため、2010年(平成22)に鳩山由紀夫(はとやまゆきお)首相のもとで設置された「新しい公共」円卓会議で、「社会事業法人制度」が提案され、法制化に向けた検討が進められている。
[編集部]
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