新本だが正規の定価よりも安く売られる特価本の異称で,見切本,数物(かずもの),擦れ本(すれぼん)などとも呼ばれる。ぞっき本という異称が生まれたのは,一説にはぞっき本を扱う〈ぞっき屋〉が元は〈そぎや〉と呼ばれていたためであるという。〈そぎや〉とは皮などをはいで仕分ける〈殺屋〉あるいは〈削屋〉の意で,このことから見切品の値をそいで仕入れるという意味が生じ,ぞっき本という言葉が生まれた。また別の説では,〈ぞっき〉は〈すべて〉という意味があり,残り本すべてがそっくり処分されるという意味から生じた呼称であるともいわれる。出版社が倒産したり,返品の処理にこまったとき,新本を正規のルートでなく専門の問屋に定価の20~30%の価格で処分し,それがぞっき本となって専門の小売書店や古書店で売られることになる。なお専門問屋の集りである全国出版物卸商業協同組合は草双紙や錦絵の類を扱った江戸時代の地本草紙問屋仲間に端を発している。
執筆者:植田 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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