ぞっき本(読み)ゾッキボン

デジタル大辞泉 「ぞっき本」の意味・読み・例文・類語

ぞっき‐ぼん【ぞっき本】

定価を度外視した安値で投げ売りにされる出版物。見切り本。

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精選版 日本国語大辞典 「ぞっき本」の意味・読み・例文・類語

ぞっき‐ぼん【ぞっき本】

  1. 〘 名詞 〙 ぞっき屋の手を通して、特別安値で投げ売りされる新本特価本
    1. [初出の実例]「小山の本は近いうちゾッキ本になって」(出典:伊藤整氏の生活と意見(1951‐52)〈伊藤整〉九)

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改訂新版 世界大百科事典 「ぞっき本」の意味・わかりやすい解説

ぞっき本 (ぞっきぼん)

新本だが正規の定価よりも安く売られる特価本の異称で,見切本,数物(かずもの),擦れ本(すれぼん)などとも呼ばれる。ぞっき本という異称が生まれたのは,一説にはぞっき本を扱う〈ぞっき屋〉が元は〈そぎや〉と呼ばれていたためであるという。〈そぎや〉とは皮などをはいで仕分ける〈殺屋〉あるいは〈削屋〉の意で,このことから見切品の値をそいで仕入れるという意味が生じ,ぞっき本という言葉が生まれた。また別の説では,〈ぞっき〉は〈すべて〉という意味があり,残り本すべてがそっくり処分されるという意味から生じた呼称であるともいわれる。出版社が倒産したり,返品の処理にこまったとき,新本を正規のルートでなく専門問屋に定価の20~30%の価格で処分し,それがぞっき本となって専門の小売書店や古書店で売られることになる。なお専門問屋の集りである全国出版物卸商業協同組合草双紙錦絵の類を扱った江戸時代の地本草紙問屋仲間に端を発している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぞっき本」の意味・わかりやすい解説

ぞっき本
ぞっきぼん

特価書籍の俗称。ほかに見切本、数物(かずもの)などともいう。江戸時代の地本問屋の流れをくむというが、1902年(明治35)ごろより見切本専門の卸商が発生し、書店のほか、露店、荒物店、乗り物内などで売られた。品目としては、大衆読物、絵本、実用辞典、暦、月遅れ雑誌などがあり、最初から特価を前提につくられたものを「つくり本」という。「ぞっき」の語源は「殺(そ)ぐ」からとか「そっくり」からとかいわれるが、定説はない。

[紀田順一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ぞっき本」の意味・わかりやすい解説

ぞっき本
ぞっきぼん

特価本のこと。「ぞっき」の語源は「まとめて」という意味の商売人の隠語だという。出版社が金融のために「まとめて」処分した特価本は,定価の 20~30%という割引価格で小売店に流れる。小売店はそれを定価の 60~70%の価格で売る。ぞっき本を専門に扱う本屋を「ぞっき屋」という。

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