タルデュー(読み)たるでゅー(英語表記)André Tardieu

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タルデュー」の意味・わかりやすい解説

タルデュー(Jean Tardieu)
たるでゅー
Jean Tardieu
(1903―1995)

フランスの詩人劇作家。ジュラ山地のサン・ジェルマン・ド・ジューで画家の父と音楽家の母の間に生まれる。初め古典的な節度をもつ荘重な叙情詩から出発したが、第二次世界大戦中、対独レジスタンスに参加し、アラゴン、エリュアールらとともに地下出版「深夜叢書(そうしょ)」(「深夜双書」)を拠点に『フランスの領土』Domaine français(1943)などの抵抗詩を発表した。またこのころからしだいにアンリ・ミショーの詩にみられるような即物的で異常な世界を歌う詩編が多くなった。『アクサンAccents(1939)、『見えない証人』Le témoin invisible(1943)、『ムッシュー・ムッシュー』Monsieur Monsieur(1951)、『誰(だれ)もいない声』Une voix sans personne(1954)などの詩集のなかには、繰り返し「空間」「深淵(しんえん)」「灰」「煙」などのイメージが現れる。第二次大戦直後から劇作にも手を染めたが、いずれも非常に短い、登場人物がきわめて少ない芝居で、それらを集めた劇作集『室内劇Théâtre de chambre(1955、新版1979)の題名そのものが、簡潔なその内容を物語っているといえる。タルデューは詩においても演劇においても、人間言語がもつ能力限界を、探し求めているかのようである。

稲田三吉

『大木久雄訳『ことばの時間』(『現代フランス演劇五人集』所収・1977・白川書院)』『窪田般彌訳『ジャン・タルデュー』(『フランス現代詩29人集』所収・1984・思潮社)』『大木久雄訳『ジャン・タルデュー選集』(1995・青山社)』


タルデュー(André Tardieu)
たるでゅー
André Tardieu
(1876―1945)

フランスの政治家。パリに生まれ、エコール・ノルマルに学ぶ。1903年から1914年まで政府系新聞『タン』紙の論説記者として健筆を振るい、内外の注目を浴びた。1914年に下院入りし、第一次世界大戦では将校として従軍したのち在米特別代表を務めた(1917~1918)。パリ講和会議ではクレマンソーの右腕としてベルサイユ条約作成に活躍し、クレマンソー内閣下で返還地域担当相(1919~1920)を務めた。その後、保守派諸内閣で公益事業相(1926~1928)、内相(1928~1930)、無任所相(1934)を歴任し、その間三度首相も務めた(1929~1930、1930、1932)。彼の内閣は、政府の積極的介入による経済拡大という新しい政策を採用したが、議会の支持はかならずしも得られなかった。彼は議会政治に失望し、1930年代には保守的な国家改造を主張し続けた。

[平瀬徹也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タルデュー」の意味・わかりやすい解説

タルデュー
Tardieu, Jean

[生]1903. アン
[没]1995.1.27. パリ
フランスの詩人。その作品には深い知性と豊かな感受性がみられる。代表作『アクサン』 Accents (1939) 。

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