日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャンドラー」の意味・わかりやすい解説
チャンドラー(Seth Carlo Chandler)
ちゃんどらー
Seth Carlo Chandler
(1846―1913)
アメリカの天文学者。ボストンに生まれ、1861年生地の高校を卒業後、ただちにグールドBenjamin A. Gould(1824―1896。ダッドリー天文台長)の助手となり、1864年にアメリカ海岸測量局で経度測量に従事した。1881年ハーバード大学天文台員となり、実地天文学の観測に精進、その業績により、1891年デ・パウ大学より学位を得、1895年国立科学アカデミーからワトソン賞を受け、さらに1896年イギリスの王立天文協会から金メダルを授与された。天文通信の改良、浮遊天頂儀の考案、緯度の精密測定、彗星(すいせい)および変光星の観測、恒星目録の調整などの諸業績のなかでも、特長は緯度観測の方法と成果である。自作の浮遊天頂儀を用いて1884年秋から翌年の春にかけて継続観測し、その誤差0.028秒角の精度を吟味して周期427日の緯度変化を発見、その原因が振幅0.3秒角範囲の極運動に基づくことを実証した。
[島村福太郎]
チャンドラー(Raymond Chandler)
ちゃんどらー
Raymond Chandler
(1888―1959)
アメリカの推理作家。ハードボイルド推理小説のエスプリに到達した作家として世評が高い。1933年に最初の作品をパルプ・マガジンに発表し、39年の『大いなる眠り』で高い評価を得たが、探偵フィリップ・マーローはこのときの創造である。54年にエドガー賞を受賞した『長いお別れ』は彼の最高傑作といわれ、その凝縮された描写、皮肉な会話、サスペンスと暴力の漂う雰囲気、構成力のあるプロットなどで都会的文学性を漂わせている。ハリウッドの脚本家として、一時期活躍したこともある。
[梶 龍雄]
『『世界ミステリ全集5 チャンドラー』(1972・早川書房)』▽『フランク・マクシェイン著、清水俊二訳『レイモンド・チャンドラーの生涯』(1981・早川書房)』