下水や廃水中に生ずる細菌などの微生物からなる汚泥。通常の汚泥との差異は,有機物質や無機物質を摂取して分解する能力をもつことで,このため〈活性〉の名がある。好気性細菌群と通性嫌気性細菌群を主体とし,このほか菌類,原生・袋形・環形・節足動物などと藍藻類が共存している。好気性細菌群と菌類は,溶存酸素の存在下で水中の有機物質を摂取して酸化し,水,炭酸ガス,アンモニアなどに無機化し,通性嫌気性細菌群は,有機物質を酸化あるいは還元して有機酸,炭酸ガスなどを生成し,また一部の通性嫌気性細菌(脱窒素菌)は硝酸呼吸を行って,下・廃水中の硝酸,亜硝酸から酸素を取り窒素ガスを生成すると同時に有機物を酸化分解している。原生動物や後生動物は,粒子状有機物質やこれらの細菌を餌にすることで共存しており,また藍藻類は光の存在下では光合成を行い,光のない場合は好気性細菌と同様に有機物質を分解する。
有機物質を酸化あるいは還元することで生存の基本エネルギーを獲得している細菌を他(有機)栄養細菌と呼ぶが,活性汚泥の中には,無機物を酸化することによってエネルギーを得ている自(無機)栄養細菌と呼ばれるものも存在する。例えばアンモニアを亜硝酸に,亜硝酸を硝酸に酸化する亜硝酸菌および硝酸菌である。これらは下・廃水中の窒素を生物学的に除去するうえで,脱窒素菌とともに活性汚泥中の重要な細菌である。なお,好気性細菌,通性嫌気性細菌群は,いずれも数十から数百種の細菌種で構成されているとみられるが,現在のところ限られた種以外,その内訳は完全には確認されていない。このような有機物質,無機物質を分解する活性汚泥の働きは,下水や廃水の処理に利用され,活性汚泥を利用した処理方法を活性汚泥法という。活性汚泥の特徴に,細菌群が凝集して羽毛状あるいは海綿状の固まり(フロック)を形成し重力沈降しやすいことがあり,このために処理した下・廃水と活性汚泥の分離が容易で,再び活性汚泥を新しい下・廃水処理に使用できるという利点がある。ただし活性汚泥中に糸状細菌,糸状菌や高分子物質を細胞外に蓄積する細菌が増加すると,活性汚泥が凝集沈降しにくくなるバルキング(膨化)と呼ばれる状態が起こることがあり,このバルキングの発生を防ぐことが活性汚泥法の制御管理上重要な問題となっている。
→下水処理
執筆者:松井 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
活性スラッジともいう.汚水や廃水を生物学的に処理する際に用いられる,細菌や原生動物などの微生物群(活性スラッジ生物)が大量に生息している綿状褐色の泥(汚泥フロック)をいう.主要なフロック形成細菌としてZoogloea(ズーグレア)が知られ,BODを低下させる.エアレーションなど好気性条件下で微生物の代謝作用を高め,汚水中の有機物を分解,凝集,沈殿させて処理するために用いられる.沈殿除去や返送などの技術を要するが,非常に高い浄化能力をもつことから,下水処理から各種有機性廃水,工場廃水などの処理に広く用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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