つるぎ(町)(読み)つるぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「つるぎ(町)」の意味・わかりやすい解説

つるぎ(町)
つるぎ

徳島県中西部、美馬(みま)郡にある町。2005年(平成17)、美馬郡半田町(はんだちょう)、貞光町(さだみつちょう)、一宇村(いちうそん)が合併して成立。町域は南北に長く、吉野川中流の南岸から剣(つるぎ)山(1955メートル)の北麓(ろく)にかけて広がる。東部を貞光川、西部を半田川が北流し、吉野川に合流する。山間部が多く、とくに南部の一宇地区では過疎化の進行が著しい。吉野川沿いにJR徳島線と国道192号、貞光川沿いに国道438号が走る。剣山登山玄関口の一つで、町名も剣山に因む。南部は剣山国定公園の指定域。

 江戸時代には葉藍、葉タバコといった商品作物栽培や紙漉が盛行したが、明治時代後半になると葉藍栽培は衰退、かわって養蚕が盛んとなり、大正時代には貞光に製糸工場も設置された。しかし、近年は養蚕、葉タバコ栽培ともに低迷。現在はカキユズなどの果樹や茶の栽培、ハウス園芸、軽量多品目の山間野菜の栽培、養鶏などが盛んである。

 貞光川、半田川の河口近くに形成される貞光市街、半田市街はそれぞれの谷口集落として発達。江戸時代に徳島藩の代官所が置かれた貞光の商圏は、近代以降、貞光川流域ばかりだけでなく、吉野川の対岸にも及んだ。現在、貞光市街には往時の繁栄を伝える「うだつ」(隣家の境界に設けられた土造りの防火壁)のあがった建造物が約50軒あり、なかに2段式の「うだつ」を構えた町屋もあって、「二層うだつの町並み」として知られている。半田地区では江戸時代から漆器製造、素麺製造などの手工業が発達。漆器製造は昭和40年代半ばにいったん途絶えたが、その後伝統工芸品として復活、「手延べそうめん」は全国ブランドに成長している。一宇蔭(かげ)の赤羽根大師のエノキ(国指定天然記念物)は幹回り日本一ともいわれ(2022年樹体の3分の2ほどが倒壊)、同じく一宇地区にあって四国一、二を争う白山神社のモミ、桑平(くわだいら)のトチノキ、奥大野(おくおおの)のアカマツ(いずれも県指定天然記念物)などとともに、「巨樹王国」一宇を代表する樹木である。桑平には剣山スキー場がある。面積194.84平方キロメートル、人口7715(2020)。

[編集部]


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