改訂新版 世界大百科事典 「ツワナ族」の意味・わかりやすい解説
ツワナ族 (ツワナぞく)
Tswana
アフリカ南部のボツワナ共和国,ナミビア,南アフリカ共和国にまたがり居住するバントゥー系の部族。ナミビア,南ア共和国にはツワナ族のバントゥースタン(ホームランド。非白人居住地)が設けられているが,部族全体では約80万の人口に達する。ボツワナが〈ツワナ族の国〉を意味するように,この国ではツワナ族が住民の大部分を占めている。ツワナ語は言語的にはバントゥー系のソト語系に属し,ボツワナでは国語に定められている。宗教は伝統的な祖霊崇拝で,キリスト教の布教は進んでいない。
ツワナ族は17世紀中ごろに,北方より移住を行い,先住民であったサン族をカラハリ砂漠に追いやった。ツワナ族の内部はマングワト族,ヌグワケツェ族,クウェナ族,クガトゥラ族,マレテ族,バロロン族,トロクワ族など,八つの部族に分かれていて,おのおの首長が治めている。19世紀に入り,南からズールー王国が勢力を伸ばしてきたのに対抗し,マングワト族の首長カーマ3世が各部族を統合し,ツワナ王国を形成した。社会組織の特徴の一つに,男子の年齢組があげられるが,これが戦士集団を形成して,首長の軍事権力を支持した。今日でも,この年齢組は出稼集団の形成などの形で生きている。19世紀末,ボーア人との戦いに際し,ツワナ王国はイギリスの保護を求め,ベチュアナランドとして保護領になった。その後,1966年ボツワナ共和国として独立した。ツワナ族はモロコシやトウモロコシを主食として栽培し,牛を飼育するが,乾燥した土地が多く,79年の干ばつの際には大きな被害をうけた。ボツワナの場合,南ア共和国の鉱山へ出稼ぎに出かける労働者は毎年10万人を超えている。
執筆者:赤阪 賢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報