日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツーク」の意味・わかりやすい解説
ツーク
つーく
Zug
スイス中部、ツーク州の州都。ツーク湖の湖岸にあり、標高425メートル。人口2万2917(2001)。13世紀までは一漁村にすぎず、地名も漁網を引くことに由来する。1240年ごろキューブルク侯治下で都市となり、やがてハプスブルク家領となり、1352年には連邦加盟州の州都となった。市は数百年間、サン・ゴタルド峠へ向かう途上の重要な魚市場であり、兵站(へいたん)地であった。チューリヒからこの町を経てサン・ゴタルド峠またはルツェルンに至る鉄道開通により、ツーク湖の湖上交通は打撃を被ったが、一方、駅付近に商工業地区が生まれた。現在は金属、機械、器具を産する工業都市で、市域の延長は3キロメートル離れたバールの町に続いている。税金が安いため金融業、商社が集まる。
ツーク州はバーゼル・シュタット準州、アッペンツェル・インナーローデン準州に次ぐ小さいほうから数えて3番目の州で、面積239平方キロメートル、うち約半分は非農耕地である。人口10万0900(2001)。うち90%がドイツ語を話し、71%がカトリック教徒である。丘陵地、山地には小村が分布し、酪農を営むが、谷底平野では加えて集約的な果樹作も行われる。都市部では繊維、機械、食品、製紙などの工業が行われる。
[前島郁雄]