(読み)キ

デジタル大辞泉 「机」の意味・読み・例文・類語

き【机】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]つくえ
学習漢字]6年
〈キ〉
つくえ。「机案机下机上机辺浄机
ひじや腰を掛ける台。「床机しょうぎ
〈つくえ(づくえ)〉「経机脇机
[難読]文机ふづくえ

つくえ【机/案】

本を読み、字を書き、また仕事をするために使う台。ふづくえ。「―に向かう」
飲食物を盛った器をのせる台。食卓。
高坏たかつきに盛り―に立てて母にあへつや」〈・三八八〇〉
[補説]歴史的仮名遣いは、従来「つきすゑ(坏据)」の音変化とし、「つくゑ」とされてきたが、平安初期の訓点に「つくえ」の表記があり、このほうが古い語形とされる。
[類語]テーブル食卓飯台卓袱台デスク

つき【机】

つくえの異称。
「夕間にはい倚り立たす脇―が下の板にもが」〈・下・歌謡〉

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精選版 日本国語大辞典 「机」の意味・読み・例文・類語

つくえ【机・案】

  1. 〘 名詞 〙 ( 歴史的仮名遣いは従来「つくゑ」とされてきたが「つくえ」が古い語形か )
  2. 長方形の脚つきの台。宮殿の調度の一種で、床に直接置けない器具を載せ、献饌(けんせん)進物の台としても用いる。
    1. [初出の実例]「夫(そ)の品(くさく)の物、悉くに備(そな)へて百机(ももとりのツクエ)に貯(あさ)へて饗(みあへ)たてまつる」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    2. 「御子たちつかう賄し給ふ。博打、童部、らうそく集りて、つくゑたてて物食ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
  3. 文房具の調度として読書や執筆に用いる台。文机(ふづくえ)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「居間の二階にて書案(ツクヱ)によりて物を書きてをられしが」(出典:随筆・北越雪譜(1836‐42)初)

机の語誌

「つくえ」の「え」は、「十巻本和名抄‐四」に「都久恵」とあるところからワ行の「ゑ」と考えられてきた。しかし現在では、「小川本願経四分律平安初期点」や、「法華義疏紙背和訓」に「ツ支江」とあることなどから、ヤ行の「え」であると考えられるようになった。


き【机・几】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物をのせる台。とくに、読み書きをするための台。つくえ。
    1. [初出の実例]「乃ち机(キ)に凭(より)て筆を下す」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一五)
    2. [その他の文献]〔儀礼‐士昏礼〕
  3. ひじかけ。脇息(きょうそく)

つきえ【机・案】

  1. 〘 名詞 〙つくえ(机)
    1. [初出の実例]「金々案々(ツキエ)」(出典:法華義疏紙背和訓(928頃か))
    2. 「つくへなれ共つきへとよむぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一七)

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改訂新版 世界大百科事典 「机」の意味・わかりやすい解説

机 (つくえ)

読書や物書きなどに使う文机(ふづくえ),仏前に置き香炉など載せる前机,経を読むときに使う経机,飲食物を載せて食事するのに使う食卓など各種ある。漢字ではもと几(き)と書き,これは脚付きの四角い台を描いた象形文字から発しているが,日本語の〈つくえ〉は〈坏居(つきう)え〉の意味で,元来は坏(食物を入れた器)を載せる食卓を意味している。後に文机や経机が出てくると,しだいに〈つくえ〉といえばこれらを指すようになったが,現在でも東大寺修二会のときに僧たちが食事をするのには几形の食卓を用いており,二月堂机とよばれている。文机,前机,経机とも形は似ているが,前机は甲板の下の幕板の部分に彫刻の装飾が付くものが多い。いずれも甲板に筆返しの付くものと付かないものがあるが,文机には抽斗(ひきだし)(引出し)があるものも多い。近代に入ると机といえばもっぱら文机のことで,それも洋風の椅子に腰をかけて使う背の高いものが主となった。現代では用途も拡大し,書机(書斎机,学習机,閲覧机,ライティング・デスク),事務机(事務机,タイプ机,製図机,ワーク・デスク),会議机,トレーニング・デスク,セールスマン・デスクなど非常に種類が多い。
執筆者:

ヨーロッパの机は中世の修道院の写字室scriptoriumに備えられた写字台からはじまる。それは小型の(ひつ)(チェスト)に傾斜した蓋を取り付けたもので,それを開くと書きもの台となり,内部には筆記用具や紙料などを収納した。小型で携帯可能なことからポータブル・デスクとよばれた。また,聖書を収納したことからバイブル・ボックスともよばれた。中世の修道院ではこれを大型のチェストの上に載せて使用した。ポータブル・デスクは,浅浮彫の彫刻装飾が表面に施され,旅行用の机としても利用された。中世末期にはこれをスタンドに載せた形式となり,やがて17世紀には下部が引出し付きのたんす,その上に傾斜した蓋付きの箱を載せ,その内部に小型の整理棚や引出しを備えた形式に発展した。これに伴いポータブル・デスクは急速に衰退した。フランスでは粗い毛織物ビュールbureを机にかけて書きものをしたことから,これをビューローbureauとよぶようになった。ビューローは17世紀後期から18世紀にかけて西欧で流行した代表的な机である。18世紀のロココ様式時代には,花模様や幾何学模様寄木細工中国趣味(シノアズリー)の漆塗が施されて一段と華麗さを増した。1700年ころからビューローの上に観音開きの扉付き大型書棚あるいは整理棚を載せたセクレタリーsecretaryとよぶ書きもの机が現れた。ビューローの傾斜板は垂直になり,正面の扉を前に倒すと書台になる。上部は書物や筆記用具を収納し,下部はスタンド形式のものや戸棚またはたんす形式のものもみられる。イギリスのセクレタリーはウォルナットマホガニーの化粧張りを施したものが流行し,フランスのルイ15世時代のものは花模様の寄木細工や黒漆に蒔絵を飾った華麗なスタイルが流行した。家具師J.H.リーズナーがマリー・アントアネットのために製作した作品は,花模様の寄木細工と精巧な金鍍金ブロンズ金物で飾った最も優れた書机の一つである。この書机の上端には軒蛇腹,両端に飾り柱,扉の中央にメダイヨン(円形装飾)が付いている。

 一方,17世紀末からはデスク・テーブルdesk-tableとよぶ単純な小型の4脚式の机が流行した。これは主として女性が手紙やメモなどを書くためのもので,机の両袖に引出し,甲板の後部に小型整理棚を備えている。フランスではこれをボヌール・デュ・ジュールbonheur-du-jourと名付け,ルイ15世時代からナポレオン1世時代にかけて,婦人の寝室用の書机として人気を博した。ルイ16世時代には中央部の引出しに折畳み式化粧鏡を組み込み,両袖に化粧品と化粧具を収納できる引出しを取り付けたので,この書机は化粧テーブルの役目も果たすことができた。イギリスではこの机をレディ・デスクlady deskとよんでいる。18世紀のイギリスではカールトンハウス・テーブルCarlton House tableと名付けて,机の甲板上に,馬蹄形に小型引出しと整理棚を備えた婦人用の書きもの机が流行した。この名称はロンドンの皇太子の邸宅カールトンハウスに保存されていたことに由来する。19世紀初期からビクトリア朝にかけては,傾斜した書板と横に引き出す引出しを側面に備えたダブンポートdavenportとよぶ事務用の机が流行した。小型で機能的であったので婦人用の机としても愛用された。19世紀から20世紀にかけて装飾的要素はしだいに除去され,シンプルで機能を重視した机が主流となった。
テーブル
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「机」の意味・わかりやすい解説


つくえ

事務、読書などを行う台形の家具で、甲板(こういた)と脚および引出しからできている。古くから台の用途にはテーブルが使われていた。今日の事務用机のような形ができあがった歴史は、ごく新しいことである。

[小原二郎]

歴史

西洋の机の原型は中世僧院の写字台で、それは櫃(ひつ)の上に蓋(ふた)付きの箱をのせたものであった。17世紀になって、箱の蓋を開くとそれが甲板になる形式が生まれ、これをビューローbureauとよんだ。18世紀には、箱の中が書棚になり、それをセクレタリーsecretaryと名づけた。一方同じころに、婦人用として、小形の机の両袖(そで)に引出しのついたデスクテーブルとよばれるものが使われていた。それが木製デスクの形に発展したのは19世紀で、現在のような事務専用の机が生まれて広く普及したのは、20世紀になってからのことである。

 日本では『古事記』と『日本書紀』に机という字が出てくるが、それは卓または案(あん)の一種であった。筆記用のものが現れたのは、経机がつくられた奈良時代で、室町時代には建物の一部に造り付けになった出文机(だしふづくえ)が現れ、やがて付書院(つけしょいん)へと発達していった。

 机は第一次世界大戦の前までは、ヨーロッパにおいてもほとんど木製であった。戦後ドイツのバウハウスで鋼管家具がつくられ、それが糸口になって新材料の家具がつくられるようになった。わが国は第二次世界大戦後アメリカに倣ってスチール製机をつくったが、それが急速に普及して、いまでは事務用机といえばスチール製のものを連想するほどに広く使われている。最近ではオフィスオートメーション(OA)の普及によって、コンピュータ機器にあわせた各種の机がつくられている。

[小原二郎]

種類

机には座り机と立ち机がある。座り机は伝統的な和室用の書き机で、畳の上で使用する。立ち机は椅子(いす)と組み合わせるもので、平机(袖のないもの)、片袖机、両袖机、タイプ用机、コンピュータ用机などの種類がある。材料による区分としては、木製机、スチール製机、木金の混合机などがある。机の規格には事務用と学校用のJIS(ジス)(日本工業規格)がある。

 机の寸法のうち、機能的にもっともだいじなものは高さである。高さは椅子の座面から測るのが合理的で、座面から甲板までの距離を差尺(さじゃく)という。事務用椅子の高さは40センチメートルが標準で、日本人成人男子に適した差尺の平均は30センチメートル、女子の差尺の平均は28センチメートルであるから、事務用机の高さは70~68センチメートルを目安と考えればよい。JISでは70センチメートルと67センチメートルになっている。また、下肢のためのスペースとしては、間口方向に60センチメートル以上の空きをとるように決めてある。

[小原二郎]

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普及版 字通 「机」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

(異体字)几
2画

[字音]
[字訓] つくえ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は几(き)。几は机の初文で象形。両端に足のある台の形。〔説文〕十四上に「几は踞几なり。象形」とみえる。机を〔説文〕六上に木の名とし、楡に似た木の名であるが、これは別義。

[訓義]
1. つくえ。
2. 木の名、さるなし。
3. くわのみ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕机 加知木(かぢき) 〔和名抄〕机 久惠(つくゑ) 〔字鏡集〕机 ウツバリ・ツクエ・ヲシマツキ*語彙は几字条参照。

[熟語]
机案・机・机下・机上・机杖・机榻・机辺
[下接語]
案机・玉机

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「机」の意味・わかりやすい解説


つくえ
desk

中国,日本では古くは俎 (そ) ,几 (き) ,案,卓の語を用い,いずれも机と同義語。一般に甲板とこれを支える脚から成り,多くは引出しがついている。木製のものが普通で,なら材が賞用され,上等のものでは桜やマホガニーなどが使われていたが,最近は鋼製のものが多くなった。袖なし机,片袖机,両袖机がある。また,使用しないときはふたのできる机,タイプ用の2段になった机など特殊なものもある。最近は高さを調節できるものや,本棚などの付属している児童用机もみられる。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「机」の解説

つくえ【机/案】

読み書きなどの作業に使う脚のついた台。椅子(いす)に腰かけて使うものと、床に座って使うもの(座り机)がある。

出典 講談社家とインテリアの用語がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【文台】より

…机の一種であるが,平安時代を中心に使われたものと,室町以降のものとがある。いずれも詩文に関係が深い点が共通している。…

※「机」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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