竜盤目竜脚形類(亜目)竜脚類(下目)ネオサウロポッド類Neosauropoda(新竜脚類)ディプロドクス上科Diplodocoideaディプロドクス科Diplodocidaeに属する恐竜。北アメリカ西部のジュラ紀後期、約1億5570万年~1億4550万年前の地層から産出した大形草食恐竜で、全長約27メートル。しかし体重は意外に軽く、ある推測では10トン余りであったとされる。その理由は、脊椎(せきつい)の構造が軽量化されていたことによる。椎骨が深くえぐれて、ほとんど空洞化していたのである。しかし残された骨質の支柱部分は、この恐竜の巨体を支えるのに十分なほど強固であった。頭骨は高さが低く、くちばしが前方に長く伸び、頭頂部の鼻孔は目の上に位置し、上方に開いている。あごの前方だけに、鉛筆状の小さな歯が並んでいる。頸(くび)と尾が長く、尾の後半は鞭(むち)のように細長い。尾の後端は単に棹(さお)状で、神経弓(椎骨の一部で、椎体両側から上方へ1対突き出し脊髄(せきずい)を囲み、その上で癒合している)もなく、靭帯(じんたい)や腱(けん)の付着点もない。椎骨の数は、頸椎(けいつい)が15~16、胴椎10、仙椎5、尾椎80以上で合計110個以上となる。後方の頸椎や胴椎の棘(きょく)突起は2分岐して深いV字谷をつくる。この切れ込み部分には、吊橋(つりばし)のケーブルに相当するように、生前は靭帯や腱が通っていた。ディプロドクス科の特徴のもう一つは、尾の中央部分の血道弓(けつどうきゅう)(椎体から下方へ1対突き出ている突起で、血管を囲む)が、ほかのほとんどの竜脚類とは違って、下端が前後方向に伸びて、くぼんだ骨を形成し、二つの梁(はり)のようにみえることである。これは、尾が地面に押し付けられたときに、血管などを保護するためのものではないかといわれる。ディプロドクスは、恐竜のなかで体長が最大級の種類であるが、胴は比較的短い。尾の先端が鞭状で長いのは、防御に使われたためといわれる。ディプロドクスの歯は食物をかみ切るのには適しておらず、櫛(くし)のようにして葉をむしりとったと考えられている。歯にはすり減った咬耗(こうもう)のあとがあり、上下の歯をこすり合わせたとみられる。上顎(じょうがく)に対し、下顎を前後に滑らせることができたらしい。摂餌(せつじ)のときは口先をほぼ真下に向けると鼻孔が前方に開くことになり、内耳の構造とも矛盾しないといわれる。普通の姿勢は、頸椎を胴椎の延長方向と考えるのが自然であろう。頸椎の関節突起間の自由度を調べると、頸を持ち上げられる範囲は地上4メートルまでに限られていたらしい。
[小畠郁生]
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