トチカガミ(読み)とちかがみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トチカガミ」の意味・わかりやすい解説

トチカガミ
とちかがみ / 鼈鏡
[学] Hydrocharis dubia (Bl.) Backer

トチカガミ科(APG分類:トチカガミ科)の浮葉性の多年草。茎は水中を横走し、節から白いひげ根と葉を出す。成長葉は楯(たて)状葉で、托葉(たくよう)は膜質で卵状披針(ひしん)形、長さ2.5~3.5センチメートル。浮水葉はほぼ心臓形で長さ4~8センチメートル、表面は光沢があり、裏面は中央部に高さ2~5ミリメートルの浮き袋泡沫(ほうまつ)状に密生。花は単性で雌雄同株。7~10月、白色の一日花を開く。雄花雌花ともに萼片(がくへん)3枚、花弁3枚。雄しべは12本、雌しべは1本。花柄は雌花のほうが太い。果実は倒卵形、中に紡錘形で長さ1~1.5ミリメートルの淡紅色の種子がある。種子または殖芽で越冬する。池沼や小川に群生し、本州から沖縄、および広く温帯に分布する。名は、トチ(スッポン)の鏡の意味で、円いつやのある葉に由来する。

[大滝末男 2018年9月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トチカガミ」の意味・わかりやすい解説

トチカガミ
Hydrocharis asiatica; frog's bit

トチカガミ科の水生多年草。東アジアの温帯から亜熱帯に分布し,溝や湖沼岸辺に生える。茎は長く伸び,各節からひげ根を出す。葉は厚く光沢があり円形で基部は心臓形をなし全縁。長い葉柄をもち水面に浮ぶ。縦に走る5本の葉脈が目立つ。葉裏には浮き袋の役をする気胞がある。雌雄異花で,夏から秋に花柄の先端に1つの白色花をつける。雌花には総包がなく仮雄ずいを6本もち,子房は6室,花柱も6本。雄花はおしべ6~9本をもつ。雌雄花とも外花被片3枚,花弁状の内花被片3枚をもつ。和名はトチ (スッポン) の鏡の意である。ヨーロッパ産の H. morsus-ranaeによく似ているがそれより大型である。

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