イギリスの小説家。貧しい弁護士の家に生まれ,惨めな学校生活を送った。母フランシスは家計を支えるため女流作家となり,かなりの名声を得ている。大学に進まず郵政局に入り,アイルランドやイングランド西部の監督官を歴任,かたわら小説を書きはじめ,在任中の経験をもとに地方生活を題材にした風俗小説をつぎつぎに発表した。《救貧院長》(1855)ではじめて成功し,続いてイングランド西部の架空の州を舞台とする6編の〈バーセットシャー小説〉,次に同じく6編の〈政界小説〉を発表し,貴族,地主,医師,教師,牧師などの上・中流階級の生活を穏やかな筆で克明に描く多数の作品を書き,その数は約50編にのぼる。1867年に職を辞するまで毎朝出勤前に一定の分量を執筆し,その後も勤勉に制作に励んだようすは《自伝》(1883)に詳しい。当時の風俗の記録者として今日でも多くの愛読者がいる。
執筆者:海老根 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの小説家。ロンドン中産階級の出身で、母は大衆女流作家フランセス・トロロープ。父の職業上の失敗から家は貧しく、19歳で郵政省に入り、有能な官吏として昇進。勤務のかたわら小説を書き始め、『養老院長』(1855)に始まる六編の「バーセット州小説」で成功を収めた。これは、イングランド南部の架空の田園地方を舞台に、地主、牧師、僧正、貴族、その妻たちを登場させ、その生活をユーモラスな筆致で活写した作品で、代表作と目される。まれにみる多作家で、長編だけでも40を超える。19世紀中期イギリスの中流および上流社会の生活風俗を克明に再現したものとして今日でもイギリスでは読者が多い。バーセットもののほか、国会議員の生活を描く六編の「政治小説」、金融資本の横暴を暴露する『当世の生き方』(1875)、作家生活の内情を率直に語る『自伝』(1883)などが知られる。
[海老根宏]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加