トロロープ(読み)とろろーぷ(英語表記)Anthony Trollope

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロロープ」の意味・わかりやすい解説

トロロープ
とろろーぷ
Anthony Trollope
(1815―1882)

イギリスの小説家。ロンドン中産階級の出身で、母は大衆女流作家フランセス・トロロープ。父の職業上の失敗から家は貧しく、19歳で郵政省に入り、有能な官吏として昇進。勤務のかたわら小説を書き始め、『養老院長』(1855)に始まる六編の「バーセット州小説」で成功を収めた。これは、イングランド南部の架空の田園地方を舞台に、地主牧師僧正貴族、その妻たちを登場させ、その生活をユーモラスな筆致で活写した作品で、代表作と目される。まれにみる多作家で、長編だけでも40を超える。19世紀中期イギリスの中流および上流社会の生活風俗を克明に再現したものとして今日でもイギリスでは読者が多い。バーセットもののほか国会議員の生活を描く六編の「政治小説」、金融資本の横暴を暴露する『当世の生き方』(1875)、作家生活の内情を率直に語る『自伝』(1883)などが知られる。

[海老根宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロロープ」の意味・わかりやすい解説

トロロープ
Trollope, Anthony

[生]1815.4.24. ロンドン
[没]1882.12.6. ロンドン
イギリスの小説家。 1834~67年郵政省に勤務するかたわら,小説を書いた。『自伝』 (1881) によれば朝食前に機械のような正確さで1時間 1000語の割りで創作したという。架空の県を舞台に地方生活を写実的に描いた『救貧院長』 The Warden (55) 以下全6編の連作小説『バーセットシャー物語』 The Barsetshire Chronicle (55~67) で流行作家となった。ほかに『彼女を許せるか』 Can You Forgive Her? (64~65) 以下の政治小説などがある。平明な文体と確かなリアリズムによって近年再評価を受けている。

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