翻訳|nuisance
生活妨害を表す英米法上の用語。私的生活妨害private nuisanceと公的生活妨害public nuisanceの2種類がある。後者は,公道の妨害,騒音・煙・悪臭等を放散して社会一般に迷惑をかける行為で,犯罪(軽罪)を構成する。公的生活妨害は民事訴訟の対象となりえないが,ただこれにより社会一般と異なる特別な被害を受けた者がある場合には,私的生活妨害となって私訴が可能となる。私的生活妨害は,民事訴訟によって損害賠償または差止めを求めうる(さらに場合によっては自力除去もできる)。これには2種類あり,(1)人間に対する侵害として,騒音・煙・悪臭・震動等によって健康侵害,精神的苦痛,日常生活上の不便を与えること,(2)財産権侵害として,隣地に雨水を建物から注ぎ入れること,樹木の枝や根を隣地に侵入させること,通行権や採光権を侵害することなど,多様な内容を含んでいる。多様な内容を含むだけに定義することが困難とされているが,いずれにせよ,ニューサンスは動産・不動産に対する物理的かつ直接的干渉であるトレスパスtrespassと区別され,間接的干渉であるとともに,訴訟の対象が土地または土地に関する権利の享受を不法に侵害する行為でなければならず,被害者の人格的権利でない点で共通している。もっとも,土地を現に占有していればよく,不法占拠者でも提訴することができる。ニューサンスは,ドイツ法におけるインミッシオンに対応するが,生活妨害にあたる範囲はこれより広い。
英米法では,訴権ごとに法理を考える伝統から,ニューサンスという類型のなかで損害賠償と差止めの法理が総括されているが,日本では,損害賠償は不法行為法の適用の問題として処理され(民法709条以下,国家賠償法1条以下,大気汚染防止法25条以下等特別法),差止めは,条文上の根拠はないが,人格権または物権を根拠に認められている。
→インミッシオン →差止請求権
執筆者:沢井 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
煤煙(ばいえん)、汚水、騒音、振動、悪臭、日照妨害などによって、他人の利益を侵害する行為をいう。英米法上の概念で、日本の公害・生活妨害にあたる。
英米法上、ニューサンスには、プライベート・ニューサンスprivate nuisanceとパブリック・ニューサンスpublic nuisanceとがある。前者は私的利益の侵害であって不法行為を構成するのに対し、後者は公衆の利益の侵害であって犯罪を構成する。しかし後者の場合でも、私人が特別損害を立証すれば、差止めまたは損害賠償を請求できる。日本でも、煤煙・汚水・騒音などにより他人の利益を広範に侵害する場合を公害とよび、隣近所の小規模な加害を生活妨害とよんで両者を区別することがあるが、それらは程度の差であって、質的な区別ではない。
わが国の場合、公害・生活妨害は、重過失責任とされる場合のほかは、民法第709条の一般の不法行為の規定(損害賠償の場合)および物権的請求権や人格権(差止請求の場合)によって処理される。たとえば騒音によって生活を妨害された場合には、第709条によって損害賠償を求め、あるいは物権的請求権や人格権を行使して差止めを求め、またはこれらをあわせて請求することが可能である。
[淡路剛久]
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… 衛生害虫は刺咬(しこう),吸血あるいは毒物分泌,内部寄生の直接加害のほか有害病原の媒介があり,それ以外にゴキブリ,ハエなどに見られる単なる有害菌の運搬などもある。また,近年都市などでは,室内に無害の昆虫が出ただけで,不快害虫nuisanceとしてきらわれる。貯穀・食品害虫は食用生物および生産物の種類が増えてもあまり多くはならない。…
※「ニューサンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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