日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニュー・ラナーク」の意味・わかりやすい解説
ニュー・ラナーク
にゅーらなーく
New Lanark
イギリスの社会運動家ロバート・オーエンが1800年に支配人となって経営に成功した有名な紡績工場がある場所。2001年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。スコットランド中南部、グラスゴー南東約50キロメートル、現在のラナーク市の南約1.6キロメートルの地で、クライド川の河畔に工場が史跡として保存されている。当時はスコットランド最大、約2000人の工場で、オーエンは性格形成原理に基づいて児童の労働をやめさせてこの地に世界で最初の幼稚園をつくり、大人の労働時間も短縮して夜間学校で教育を与え、労働条件と生活環境を大幅に改善した。福利施設もつくり、しかも利益をあげたので、「ニュー・ラナークの奇跡」といわれ、外国からも多くの見学者が訪れた。彼の労務管理と教育の実態は、著書『社会にかんする新見解』(1813~14)のなかに詳しい。工場は1968年まで稼動した。
[白井 厚]
『白井厚訳『社会にかんする新見解』(『世界の名著42 オウエン サン・シモン フーリエ』所収・1975・中央公論社)』