改訂新版 世界大百科事典 「ネズミドリ」の意味・わかりやすい解説
ネズミドリ (鼠鳥)
mousebird
coly
ネズミドリ目ネズミドリ科Coliidaeの鳥の総称。この科はアフリカ大陸の特産で,1属6種に分類される。ネズミドリの名は,木や枝の上を巧みに動き回る姿がネズミに似ていることからつけられた。全長30~36cm。尾が長く,全長の半分以上を占めている。頭上にはふさふさした冠羽があり,くちばしは短く円錐形で,じょうぶである。脚はよく発達している。ネズミドリ類の特徴として,足の外指と後ろ指は前向きにも後ろ向きにもなるため,枝に対してあらゆる握り方が可能である。また,オウム類のように,くちばしを使って木によじ登ったり,枝から枝へ移り歩く。羽毛は非常にやわらかい。羽色は灰色か褐色で,頭部や腰の色が種によって異なる。雌雄は同色。くちばしは黒色,脚は赤い。
サハラ以南のアフリカに広く分布し,サバンナやアカシア草原にすむ。マダガスカルには分布していない。社会性が強く,抱卵中以外は5~10羽(まれに30羽以上)の群れで生活している。飛び方は波状で,やぶからやぶへと移っていく。食物は主として植物質で,果実,漿果(しようか),若芽,花などだが,昆虫類もかなり食べ,ときには小鳥の雛を盗む。場所によっては,作物や果樹園に大きな被害を与えている。巣はかなり大きなわん型で,植物の繊維や枯葉などを材料としてつくられ,よく茂った低木の上ややぶの中にある。卵や雛をヘビなどの外敵から守るために,ネズミドリはしばしばスズメバチの巣の近くを選んで営巣する。卵はふつう白色かクリーム色の地に斑点があり,1腹2~4個。抱卵期間は12~14日。雛は晩成性で裸で生まれるが,2週間目には羽毛で覆われ,危険が迫ると巣を出て木を伝わって逃げるといわれる。雌雄で抱卵,育雛(いくすう)を行い,雛は巣立ち後も4~6週は両親といっしょにくらしている。さえずりはしないが,移動中や巣の近くでさまざまな声を出す。飼鳥としてはまれだが,動物園ではよく人になれ,長生きし,繁殖もする。飼うにはバナナ,果物,パン,牛乳などを与える。
ネズミドリ目Coliiformesはネズミドリ科だけからなり,その類縁関係はよくわかっていない。代表種のアオエリネズミドリColius macrourusは後頸(こうけい)が青色で,セネガルからソマリアまでの熱帯アフリカに分布する。シマネズミドリC.striatusは褐色に縞模様があり,サハラ以南のアフリカに広く分布している。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報