のぼせ

食の医学館 「のぼせ」の解説

のぼせ

《どんな病気か?》


〈暑さによるのぼせと、病気が原因ののぼせ〉
 風呂あがりなどにくらっとしたりすると「のぼせた」という表現を使います。これは、体があたたまり、血管が拡張し、血流が増加して起こります。
 顔がほてる、頭がぼーっとするなどの状態ものぼせの一種。暑い日差しの下に長時間いたり、極度な緊張状態や精神的興奮時にも、のぼせの症状がみられます。
 これらの要因では、体の熱を取り除いたり、興奮状態を鎮めれば、自然と解消されます。
 しかし、病気が原因で受診が必要と思われるのぼせもあります。
 1つは、自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)によるものです。比較的、突然のぼせることが多く、女性に多いのが特徴。同時に頭痛やめまいを感じることもあります。
 2つめは、はげしい動悸(どうき)や体のふるえとともに、つねに体全体がぽーっとあたたかくなる甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)や、高血圧や多血症など、重大な病気が主原因である場合。
 そして3つめは、更年期(こうねんき)の女性に多いホルモンバランスの乱れによって起こるもの。この場合の多くは、手足は冷たいのに顔だけほてったり、疲労感や頭痛、肩こりなどをともないます。

《関連する食品》


〈更年期障害はビタミンA、E、夏ののぼせは夏野菜が有効〉
○栄養成分としての働きから
 のぼせやすい人は、ビタミンEや鉄分の多い食べものを十分とるように心がけましょう。
 アーモンドなどのナッツ類やゴマにはビタミンEが豊富に含まれています。
 ビタミンEは、血行をよくし、ホルモンバランスをととのえるのに役立つので、更年期障害のホルモン分泌異常(ぶんぴついじょう)などによるのぼせに効果があります。
 高血圧によるのぼせには、減塩を心がけるとともに、血圧を下げる作用のあるカリウムの多い野菜やくだものをとりましょう。
○漢方的な働きから
 のぼせには、シナモンがよくききます。シナモンは、漢方名を桂枝(けいし)といい、甘草(かんぞう)や茯苓(ぶくりょう)と配合して用いられます。
 のぼせのほか、気の上衝(じょうしょう)による不安を取り除く働きもあります。
 そのほか、のぼせを解消するのには、シジミアサリハマグリなどを用いたスープも効果があるといわれています。

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改訂新版 世界大百科事典 「のぼせ」の意味・わかりやすい解説

のぼせ

〈のぼせ〉は,脳血流が増加して上気することをはじめ,精神的に興奮して前後のわきまえを失うこと,夢中になることなど,種々の精神的・身体的現象を含んでいる。また,その感じ方や理解については,各人によっても差がある。そこで,ここでは脳血流が増加した状態,いわゆる〈上気〉あるいは〈頭に血がのぼる〉という状態について,生理学的見地から解説することとしたい。

 脳血流の増加は局所的な代謝性因子と自律神経性因子によって起こる。一般に脳が著しくその活動を増すと,代謝性因子として,その部分の酸素消費量が増大し,酸素濃度の低下と炭酸ガス濃度の上昇をきたす。この結果,脳血管が拡張し,脳血流は増加する。精神的興奮時には,脳細胞の活動は当然増加するわけであるから,脳血流は著しく増加していると推定できるが,〈のぼせ〉た状態のときに直接これを測定した実験的証明はまだない。

 最もよくみられる〈のぼせ〉,いわゆる顔面紅潮を伴った上気hot flushは,血管運動の一つの徴候で,女性の更年期によくみられる。突然に頭部および上半身血管拡張が起こり,熱感があり,しばしば発汗を伴って出現する。更年期にみられるこのような自律神経失調症状は,ホルモン分泌の急激な変化による自律神経中枢の機能変調に基づいて起こると考えられている。

 一方,精神的興奮,すなわち情動興奮は,自律神経中枢にも直接影響するため,交感および副交感神経を介して,血管や心臓の機能を変調させる。つまり情動興奮を伴った〈のぼせ〉は,前述のような局所的な代謝性因子と自律神経性因子の両方が関与していると考えられる。

 これに対し,高温多湿の環境のもとで激しいスポーツや筋肉労働を行ったとき,あるいは入浴中に起こる〈のぼせ〉は,主として循環系および自律神経系の失調によるものである。暑熱に対する体温調節機序が働く過程でみられ,心拍出量の増大と著しい血管拡張,および発汗を伴う。さらに進行すると熱虚脱など,いわゆる熱中症となり,循環系および中枢神経系の障害を伴うようになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「のぼせ」の意味・わかりやすい解説

のぼせ

逆上、上気ともよばれ、俗にいう「頭に血が上る」といった状態で、明確な定義はない。顔がほてって熱感があり、発汗、頭痛、めまいなどを伴うこともある。原因はいろいろあり、熱い湯の入浴や長湯によるもの、精神的興奮による生理的なものをはじめ、高血圧症、更年期障害、高温障害のほか、内分泌障害や自律神経失調症などの一症状としてもみられることがある。

[柳下徳雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「のぼせ」の意味・わかりやすい解説

のぼせ

一般に顔,頸,頭部などの充血感,熱感をいう。正常人の安静時の血液分布は,50%が体循環の静脈系,12%が心臓内,8%が肺循環にほぼ集約され,残部が動脈,細動脈,毛細血管などにあてられ,のぼせ感を与えるような偏在血量はきわめて少量とされている。生理学上は,自律神経系の部分的機能障害と解されている。医学的に厳密な定義はない。

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