日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノルドストランド石」の意味・わかりやすい解説
ノルドストランド石
のるどすとらんどせき
nordstrandite
水酸化アルミニウムの鉱物の一つ。他の相と識別する際にはβ(ベータ)-Al(OH)3と表示される。Al(OH)3は同質四像関係にあり、多型も入れると同質五像となる。自形は菱形(ひしがた)の輪郭をもつ板状。輪郭は劈開(へきかい)面と一致する。土壌鉱物として産し、起源は石灰岩中の泥質の部分である。油母頁岩(ゆぼけつがん)中の石灰質あるいは苦灰岩(くかいがん)質の部分に伴われる泥岩に多い。霞石閃長岩(かすみいしせんちょうがん)質ペグマタイトの最末期の産物であり、またその本体の中の捕獲岩の分解生成物をなす。日本では群馬県藤岡市下日野(しもひの)の炭酸塩化を受けた堆積(たいせき)岩中に産し、また三重県多気(たき)郡多気町佐奈からも報告されている。
共存鉱物は堆積岩関係のものはカオリナイト、ダイアスポア、針鉄鉱、石英など。同定は他の水酸化アルミニウムの鉱物とは識別できない。名称は天然石の発見以前に与えられており、最初にこの物質を合成したアメリカ、イリノイ州シンクレアSinclair研究所のロバート・A・バン・ノードストランドRobert A. van Nordstrand(1917― )にちなんでnordstranditeとよばれていたが、これが1962年天然での発見時にそのまま鉱物名となった。
[加藤 昭]
ノルドストランド石(データノート)
のるどすとらんどせきでーたのーと
ノルドストランド石
英名 nordstrandite
化学式 β-Al(OH)3
少量成分 Fe,Na
結晶系 三斜
硬度 3
比重 2.45
色 無,白,淡紅
光沢 ガラス。劈開面上では真珠
条痕 白
劈開 二方向に完全。矩形に近い菱形の輪郭をつくる
(「劈開」の項目を参照)