日本大百科全書(ニッポニカ) 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説
バクソン文化
ばくそんぶんか
Bac-Son
東南アジア新石器時代前期の文化。ベトナムのハノイ北東のバクソン山地で1920年代にフランスのマンシュイ、コラニらが多数の洞窟(どうくつ)、岩陰(いわかげ)遺跡を調査し、この文化の概要を明らかにした。独立(1976)後はベトナム考古学者による調査も行われている。洞窟内には食料遺残である淡水産貝類や獣骨の層を伴うものが多い。特徴的な遺物は、扁平(へんぺい)な礫(れき)を周囲から打ち欠き、先端を磨いて刃をつけたもので、バクソン型石斧(せきふ)または原新石器とよばれている。半割した竹か管骨(かんこつ)の先端を磨くのに用いられたと思われる跡が残る「溝石(みぞいし)」も多い。ほかに打製だけの礫器、凹石(くぼみいし)、砥石(といし)、単純な形の骨角器もある。土器は一般に伴出しないが、この文化に近似した石器を有するダ・ブート貝塚では粗雑な土器を伴っている。バクソン山地の遺跡でも上層に本格的な新石器時代の文化層が存在するものがあるが、これはバクソン文化からは除外すべきものである。
[今村啓爾]