(読み)かえる(英語表記)Batrachoi

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


かえる
Batrachoi

ギリシアのアリストファネスの喜劇。前 405年初演。「文芸批評物」の一つ。三大悲劇詩人が亡くなったアテネの舞台に昔日の面影を取戻そうとして,悲劇の神ディオニュソスは冥府に下り,アイスキュロスエウリピデスのいずれかを連れ戻そうとする。冥王の前で2人が技を競って相手の悲劇をこきおろし,論争と実演を繰広げ,両詩人のパロディーがみごとに展開される。最後にアイスキュロスが勝って,ディオニュソスとともにアテネに戻ることになるが,負けたエウリピデスに対しても作者は称賛を惜しまない。題名はディオニュソスが三途の川を渡るときに聞えてくる蛙の合唱隊による。

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デジタル大辞泉の解説

あ【蛙】[漢字項目]

[音]ア(慣) [訓]かえる かわず
〈ア〉両生類の名。カエル。「蛙声/井蛙(せいあ)
〈かえる(がえる)〉「青蛙赤蛙雨蛙

かいる【×蛙】

かえる(蛙)」の音変化。室町時代以後、話し言葉で多く使用された。
「鼠―を請じて、いつきかしづきもてなす事極まれり」〈仮・伊曽保

かえる〔かへる〕【×蛙/×蝦/×蛤】

無尾目の両生類の総称。体は太短く、首のくびれがなく、目は上方に出て、口が大きい。前足に4本、後ろ足に5本の指と水かきをもつ。昆虫やミミズなどを舌で捕らえて食べる。声帯鳴嚢(めいのう)をもち、鳴くものが多く、水田・沼などにすみ、樹上や地中にすむものもある。幼生はおたまじゃくしアマガエルトノサマガエルヒキガエルウシガエルなど種類が多い。かわず。 春》「痩―まけるな一茶是(これ)にあり/一茶

かわず〔かはづ〕【×蛙】

カエル別名 春》「古池や―飛びこむ水の音/芭蕉
カジカガエルの別名。
能楽の面の一。「善知鳥(うとう)」「阿漕(あこぎ)」などに用いる。
[補説]奈良・平安時代の用例は、12かの種別を特定しにくい場合が多い。また、「かわず」「かえる」両語の語源については諸説ある。

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世界大百科事典 第2版の解説

かえる【蛙】

草野心平の第4詩集。1938年(昭和13)刊。処女詩集《第百階級》(1928)以後の蛙を素材とした詩18編を収録。同じ蛙の詩集といっても,ここには《第百階級》に見られたアナーキスティックな反逆精神や荒々しい生の賛歌は影をひそめ,かわりに無限の時空を意識したところに生まれた諦念によって生を凝視する姿勢がうかがわれる。それは一方では無限の時空への一体化の願望となり,また一方では美しい自然を背景にした蛙のはかない生への詠嘆となっている。

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大辞林 第三版の解説

かいる【蛙】

カエル。 〔日葡〕

かわず【蛙】

カエルの別名。 [季] 春。 《 古池や-飛こむ水の音 /芭蕉 》
カジカガエルの別名。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


かえる
Batrachoi

古代ギリシアの喜劇作家アリストファネスの喜劇。紀元前405年、レナイア祭の喜劇コンテストで上演、一等賞を得る。三大悲劇詩人のうちアイスキロスはすでに前456年に亡くなっていたが、前406年にはエウリピデスとソフォクレスも相次いで世を去った。このためアテネに残るのは二流、三流の詩人ばかりとなり、アリストファネスは喜劇のなかでエウリピデスを地上に連れ戻そうと考える。そこでこの劇では、演劇の神ディオニソスがかつて冥界(めいかい)降りしたことのあるヘラクレスに扮(ふん)して地下に降り、エウリピデスを連れ帰ろうとする。ところが冥界では、古典主義的完成の体現者として局外にたつソフォクレスは別として、旧世代のアイスキロスと新世代のエウリピデスが悲劇の第一人者の椅子(いす)をめぐって争っている。そこで、来あわせたディオニソスが二大詩人の歌合戦の審判者となる。このような筋(すじ)書きを進めるために、アリストファネスは2詩人の詩句を思うままに引用して茶化す。このことから、この劇は世界最古の文芸批評ともなっている。なお題名は、三途(さんず)の川で鳴き騒ぐ蛙のコーラスに由来する。[中務哲郎]

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精選版 日本国語大辞典の解説

かいる かひる【蛙】

〘名〙 「かえる(蛙)」の変化した語。室町時代以降の用語で、特に口語で多く用いられた。
※玉塵抄(1563)一六「井の中のかいるにはかまいて大海のことかたるべからず」
[補注]本項関連の子見出し項目は「かえる(蛙)」の項にまとめた。

かえろ かへろ【蛙】

〘名〙 「かえる(蛙)」の変化した語。
洒落本・辰巳之園(1770)「帰(カヘ)ろ、ひょこひょこ三(み)ぴょこぴょこ」

かわず かはづ【蛙】

〘名〙
① 「かえる(蛙)」の異名。《季・春》
伊勢物語(10C前)一〇八「夜ひごとにかはづのあまたなく田には」
※太平記(14C後)四「蛙(カワヅ)其の数を知らず」
② 「かじかがえる(河鹿蛙)」の異名。《季・夏》
※万葉(8C後)七・一一〇六「川豆(かはヅ)鳴く清き河原を今日見てはいつか越え来て見つつしのはむ」
古今(905‐914)春下・一二五「かはづなくゐでの山吹ちりにけり花のさかりにあはまし物を〈よみ人しらず〉」
能楽で、「善知鳥(うとう)」「阿漕(あこぎ)」等に用いる面(めん)。〔わらんべ草(1660)〕
[語誌](1)「万葉集」では、①か②か判別困難な場合が多いが、主に声を賞美される②は、季を問わず「万葉集」以後も和歌に詠まれる。
(2)「(井手の)山吹」とともに詠まれることが多く、②の「古今」の歌はその代表。
(3)「かえる」が口語、俗語であるのに対して、「かわず」は歌語、雅語として用いられたといわれる。

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世界大百科事典内のの言及

【能面】より

…(3)は年齢や霊的な表現の濃淡で区別される。瘦男(やせおとこ)や蛙(かわず)は死相を表し,三日月や阿波男,怪士(あやかし)などは神性の表現に特徴がある。平太(へいた)と中将は特に武将の霊に用い,頼政や景清,俊寛など特定の人物への専用面も現れた。…

※「蛙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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