ヒクソス(読み)ひくそす(英語表記)Hyksos

翻訳|Hyksos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒクソス」の意味・わかりやすい解説

ヒクソス
ひくそす
Hyksos

古代エジプトの第15、16王朝を形成したアジア人。紀元前3世紀のエジプトの史家マネトーはヒクソスについて最初に記述した人で、ヒクソスの意味は「牧人王」であるとした。今日では「異邦人の君侯」の意とされている。マネトーはまた「ヒクソスは一戦も交えずしてエジプトを征服した」としてヒクソスの侵略の激しさを述べたが、今日では、中王国時代以降エジプトに入国したパレスチナの住民が徐々に下エジプトに増え、それが中王国以後の混乱時に勢力を伸ばしエジプト王権を握った、と解されている。彼らはウマ戦車と築城術をエジプトにもたらし、デルタ地帯の古い町アバリス(おそらく今日のタニス)を復興して王都とし、エジプトの神セトをパレスチナのバアル神と同一視して崇拝し、エジプト支配の最初の外来人王朝として約150年にわたって統治した。強力な王はキヤン王と3人のアポピ王で、オリエント各地との交易を発達させた。

[酒井傳六]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒクソス」の意味・わかりやすい解説

ヒクソス
Hyksos

前 18世紀頃東方からエジプトに侵入した異民族の名。セム系のアモリ人を中心としたいくつかの民族の混合民族と思われる。前 1720年頃最初の外国人王朝としてエジプトに君臨,古代エジプト第 15,16王朝を形成し,ナイルデルタ東北部のアバリスに都をおき,中部エジプトまでを支配した。彼らは馬と戦車,それに鉄をエジプトに伝えた。しかしヒクソスに関係のある遺跡はほとんど残っていない。前 16世紀テーベを中心として独立運動が起り,アーモス1世によってエジプトから駆逐された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android