日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトリシズカ」の意味・わかりやすい解説
ヒトリシズカ
ひとりしずか / 一人静
[学] Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama
Chloranthus japonicus Sieb.
センリョウ科(APG分類:センリョウ科)の多年草。高さ15~30センチメートル。葉は単葉で対生するが、2対の葉の間隔が詰まっているので、茎の上部で4枚が輪生しているようにみえる。花期は4~5月。花序は穂状で1本、初め4枚の葉に包まれる。包葉は卵形。花は小さく、白色の両性花で花被(かひ)はない。雄しべは3本、糸状で長さ4~6ミリメートル、白色でよく目だつ。基部は互いに合生し、さらに子房の背面に合着する。中央の雄しべには葯(やく)がない。果実は球形で淡緑色。草原や林内に生え、日本、および南千島、朝鮮半島、中国などに分布する。本種によく似たキビヒトリシズカは、葉は対生するが輪生状にならず、雄しべは長さ1センチメートル、中央の雄しべにも葯がある。
[大森雄治 2018年7月20日]
文化史
『広益地錦抄(こうえきちきんしょう)』(1719)には薬草として、及已(ぎゅうい)の名で扱われ図示されているが、ヒトリシズカの名はない。その説明には「三、四寸の小草なるがあひらしく鉢にうへてながめ……」とあり、当時、観賞栽培もされていたことがわかる。『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(1713)には吉野静(よしのしず)とされ、『重修本草綱目啓蒙(けいもう)』(1844)で「ヒトリシヅカ一名ヨシノシヅカと云(いう)」とあり、江戸後期にはフタリシズカとの対比で、ヒトリシズカの名が広がった。
[湯浅浩史 2018年7月20日]