改訂新版 世界大百科事典 「ヒナノウスツボ」の意味・わかりやすい解説
ヒナノウスツボ
Scrophularia duplicate-serrata Makino
山地の林中に生えるゴマノハグサ科の多年草。和名は〈雛の臼壺(うすつぼ)〉の意味で,花の形による。地下茎は肥厚して横にはう。茎は柔らかく,断面は四角形で直立し,高さ0.5~1m。葉は対生し,柔らかく,卵形で長さ7~11cm,幅3~5cm。8~9月,茎の先に円錐花序をつくり,まばらに暗赤紫色の花を多くつける。花はつぼ形で,長さ7~9mm,先は唇形となり,上唇は長く,内面に1個のへら状の仮雄蕊(かゆうずい)がある。果実は卵形で,長さ6~7mm。本州の関東以西,四国,九州に分布する。
近縁のサツキヒナノウスツボS.musashiensis Bonatiは5月に咲き,花は葉のわきにつき,花は大きく,長さ9~11mmある。秩父,奥多摩の山地,中央アルプス,伊吹山地に分布する。エゾヒナノウスツボS.alata A.Grayは根は肥大してまっすぐ地中に入り,茎に翼があり,高さ1.5mほどになる。東北地方,北海道,サハリンの海岸に分布する。ゴマノハグサも同属。この仲間の根を乾燥したものは漢方で玄参(げんさん)と呼ばれ,解熱消炎薬,とくにのどの病気に用いられる。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報