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弦楽器の一種。ビオラ・ダ・ガンバの機能とバイオリンの奏法をプラスし,さらに東洋で生まれたアイデアである共鳴弦を加えた独特な擦弦楽器で,出現したのは17世紀。すでにバイオリンやビオラは存在しており,これらの楽器の前身ではない。主弦が6~7本,調弦は多種多様であり,長短3度,完全4度,完全5度を含み,多くはその曲の主和音を形づくる。楽器の本体はビオラ・ダ・ガンバであるが,フレットはなく,持ち方,運弓法はバイオリンと同様である。演奏する主弦の下側に,主弦と同数の細い金属性の共鳴弦があり,主弦の音またはその倍音と一致したときに共鳴現象を起こし,銀鈴の音にも似た美しい余韻を残す。〈ビオラ・ダモーレ(愛のビオル)〉という呼名はおそらくここからきたのであろう。しかし,ビオラ・ダ・ムーアviola da Moor,すなわちムーア人がヨーロッパに持ち込んだビオルという見方の方が本当のようである。バロック時代の作品では,ビバルディの八つのビオラ・ダモーレ協奏曲が有名であるが,この楽器の特性を最もよく生かしたのは前古典派時代で,C.P.シュターミツ(1745-1801)の協奏曲やソナタは,3和音音楽の美しさを存分に示している。この楽器は演奏法の複雑さと転調の不自由さから,のちの時代の音楽の流れについていけず,急速に衰退した。現代になってまた見直され,ヒンデミットはじめ多数の作曲家が興味ある作品を書き,この楽器を現代に生かすことを考えだしている。
執筆者:浅妻 文樹
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リュート属擦弦楽器。語義は「愛のビオラ」。17世紀末から18世紀にかけて、独特の甘い音色によって人気があった。胴の長さは今日のビオラとほぼ同じ、胴の構造は狭義のビオール族とまったく同じであるが、棹(さお)にフレットがなく、7本の弦と14本の共鳴弦をもつため糸蔵(いとぐら)は湾曲して長く伸びている。ビオラのように肩に当てて弾く。各弦は曲により種々に調弦されるが、通常はD5-A4-F#4-D4-A3-F#3-D3。共鳴弦は金属製で、駒(こま)の下部の小孔から指板の下を通して張られ、上の弦と同音またはオクターブ上にあわせて調弦される。この楽器のための作品は、ビバルディ、テレマン、シュターミッツの協奏曲をはじめ、J・S・バッハの宗教曲、ルストFriedrich W. Rust(1739―96)のソナタ、ホフマイスターFranz A. Hoffmeister(1754―1812)の四重奏曲などがある。18世紀後半からほとんど使われなくなったが、20世紀に入ってヒンデミットやF・マルタンらがふたたびこの楽器のために作曲をしている。
[横原千史]
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