フラメンコ(読み)ふらめんこ(英語表記)flamenco

翻訳|flamenco

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラメンコ」の意味・わかりやすい解説

フラメンコ
ふらめんこ
flamenco

スペイン南部のアンダルシア地方の民俗舞踊と音楽の一形態。おもに同地方南部のロマ(かつてはジプシーとよばれた)により発展、継承されてきた。今日的なフラメンコの基礎が固められたのは、ロマの同地方定住がいちおう完了した18世紀のことである。

 フラメンコは、舞踊バイレ・フラメンコbaile f.と歌謡のカンテ・フラメンコcante f.、ギター・ソロのトケtoqueからなる。本来は、踊り手1人(または男女1組)、歌い手1人、ギター奏者1人で演奏されたが、近年ではさまざまな演奏形態がみられる。

 カンテ・フラメンコの多くの曲種を、その性格から便宜的に分類すると次の5種になる。

(1)深遠で重い内容のカンテ・ホンドまたはカンテ・グランデ(ポロ、ソレアレス、シギリーリャなど)。

(2)陽気で軽快、大半が踊りを伴うカンテ・チコ(アレグリアス、ブレリアス、ファンダンギーリャなど)。

(3)上の二つの中間的存在であるカンテ・インテルメディオ(ティエント、マラゲーニャ、ペテネラなど)。

(4)カンタオール(歌い手)がフラメンコ以外のアンダルシア民謡などを自己レパートリーに加えたもの(ミロンガ、ビト、タンギーリョ、ビリャンシーコなど)。

(5)宗教性の強いサエタ。このほかに、ソレアレス・ポル・ブレリアスなどのように、二つの曲種を結合した形式もある。

[アルバレス・ホセ]

『浜田滋郎著『フラメンコの歴史』(1983・晶文社)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フラメンコ」の意味・わかりやすい解説

フラメンコ
flamenco

スペイン,アンダルシア地方(→アンダルシア自治州)で 14世紀頃から発達したロマ(→ロム)起源の民族舞踊の総称。正式には,舞踊についてはバイレ・フラメンコ,歌についてはカンテ・フラメンコという。語源については諸説あるが,炎 flameの隠語で,「粋な」「派手な」を意味したことばが,ムーア人(ベルベル人)に流れをくむといわれるロマの舞踊やその音楽に用いられたとする,ガルシア・マトスの説が有力である。広く踊られる曲種にはアレグリアス,ブレリアス,カーニャス,ファンダンゴ,マラゲニャス,マルティネテス,ルンバ・ヒターナ,サエタス,セビリャナス,シギリヤス,ソレアレスなどがある。カンテ(歌)にもバイレ(舞踊)にも伴奏にはギター演奏(トケ)が用いられる。踊り手は伝統的な形式を守りながらも,自由に即興的に踊るのが特徴。純粋なフラメンコではカスタネットは使わず,指を鳴らしたり,手拍子パルマ)をとったり,足を踏み鳴らす技法(→サパテアド)が用いられる。(→スペイン音楽スペイン舞踊

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