アメリカの急進的な黒人活動家によって発せられた黒人結集のスローガンおよびその運動。公民権運動の高揚にもかかわらずなお根強く存在する人種差別や、公民権活動家に向けられた迫害やテロ行為の頻発する状況のもとで、「黒人」と「権力」とを結び付けたことによって、全米に大きな衝撃を与えた。1965年、アラバマ州のラウンデス郡に黒人青年が結成したブラック・パンサー党は、「黒人のためのブラック・パワー」というスローガンを打ち出し、翌年のミシシッピ行進のなかで、公民権組織「学生非暴力調整委員会」委員長カーマイケルが主張するや、全米に報道されて有名になった。ブラック・パワーを掲げる運動は、とみに分離主義的方向に進み、黒人・白人の統一的な運動であった公民権運動との対立を深めたが、広範な黒人の結集には成功せず、指導者たちは分裂して、運動は消滅した。しかし、黒人青年の間に鬱積(うっせき)した虚無感あるいは劣等意識を打ち破り、自尊心や自立心を培ううえでは積極的な役割を果たした。
[大塚秀之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
アメリカの公民権運動のなかで,キングらは白人社会への同化,統合を目標としていたので白人と共闘したが,平和的方法では差別は撤廃できないとする学生非暴力調整委員会ら過激派は1966年にブラック・パワー,つまり黒人の権力を提唱。黒人だけの運動,黒人による権力獲得を主張し過激な方向に転換した。その年,カリフォルニア州で過激な武装集団ブラック・パンサー党が結成され,白人権力との対決を強め,結局自滅した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…人種平等会議(CORE),学生非暴力連帯委員会(SNCC)などはしだいに過激な態度をとった。SNCCは66年〈ブラック・パワー〉をスローガンに掲げ,もはや白人活動家の役割は終わったとし,黒人だけの運動を提唱,さらにアメリカ帝国主義を究極の敵としてベトナム反戦運動への積極的参加を決定する。また同年,カリフォルニア州オークランドで黒人の武装自衛組織ブラック・パンサー党が結成される。…
…そこに出現したのが,M.L.キング師の唱える〈敵に対して抗議し,味方と連帯する〉(against and with)という運動方針であった。この呼びかけに呼応する形で現れたのが,〈自己の運命と状況について定義する権利は私にある〉ということを主張する〈ブラック・パワー〉運動であった。その結果,これまで消去の対象でしかなかった民族文化がふたたび一体化の対象として復権され,そのなかで個々の黒人が誇りをもってその身元を明かし,存在証明を実感することが可能になった。…
※「ブラックパワー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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