ブラック・パワー(読み)ぶらっくぱわー(英語表記)Black Power

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラック・パワー」の意味・わかりやすい解説

ブラック・パワー
ぶらっくぱわー
Black Power

アメリカの急進的な黒人活動家によって発せられた黒人結集スローガンおよびその運動。公民権運動の高揚にもかかわらずなお根強く存在する人種差別や、公民権活動家に向けられた迫害やテロ行為の頻発する状況のもとで、「黒人」と「権力」とを結び付けたことによって、全米に大きな衝撃を与えた。1965年、アラバマ州のラウンデス郡に黒人青年が結成したブラック・パンサー党は、「黒人のためのブラック・パワー」というスローガンを打ち出し、翌年のミシシッピ行進のなかで、公民権組織「学生非暴力調整委員会」委員長カーマイケルが主張するや、全米に報道されて有名になった。ブラック・パワーを掲げる運動は、とみに分離主義的方向に進み、黒人・白人の統一的な運動であった公民権運動との対立を深めたが、広範な黒人の結集には成功せず、指導者たちは分裂して、運動は消滅した。しかし、黒人青年の間に鬱積(うっせき)した虚無感あるいは劣等意識を打ち破り、自尊心や自立心を培ううえでは積極的な役割を果たした。

[大塚秀之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラック・パワー」の意味・わかりやすい解説

ブラック・パワー
black power

1966年6月アメリカの学生非暴力調整委員会 SNCCの委員長 S.カーマイケルによって唱えられた概念初めは単なるスローガンにすぎなかったが,次第に黒人大衆のなかに1つの思想として浸透した。黒人が白人と平等の立場に立つためには,まず黒人が経済的,社会的権力を獲得しなければならず,そのためには白人リベラルの協力をも拒否し,自衛や自己解放のためには暴力をも辞さないというもの。この思想はおりから荒れ狂っていた「長い暑い夏」の暴動と相まって,怒れる若き黒人たちをますます過激な方向に走らせたが,他方では黒人大衆に黒人としての尊厳を自覚させ,"Black is beautiful"というスローガンを生み出し,白人だけの価値観から黒人を解放するために重要な役割を果した。

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