翻訳|promethium
周期表第3族、希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。人工放射性核種の一つでもある。天然にはウラン鉱石中に痕跡(こんせき)の存在が認められるのみで、実質的には存在しない。61番元素を探す試みは多くの化学者によって行われ、発見したという報告が1926年ごろ5件も提出されたが、いずれも裏づけができず公認されなかった。サイクロトロンを用いて放射性元素を得る試みもなされたが、最終的に1945年、アメリカのマリンスキーJacob A.Marinsky(1918―2005)らが原子炉で生成し、ウランの崩壊物質中から取り出して初めて存在を確認、1947年に発表した。第二の火といわれるウランの核分裂生成物中に発見されたことから、ギリシア神話の火の神プロメテウスPrometheusにちなんで名づけられた。質量数140から152までと、154の同位体が知られている。もっとも半減期が長いのはプロメチウム145(17.7年)であるが、核燃料の再処理でもっとも多量にプロメチウム147(2.6年)が得られるので、これから化合物や金属がつくられた。銀白色金属。酸化数Ⅲの化合物をつくり、多くは淡紅色である。
[守永健一・中原勝儼]
周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1926年アメリカのイリノイ大学のホプキンズB.S.Hopkinsらによってモナザイトから分離した希土類元素を含む物質中に,また同じころイタリアのローラL.Rollaによっても発見されたと報告され,それぞれの地名にちなんでイリニウムIllinium,フロレンチウムFlorenciumと命名された。しかしこれは確実ではないとされ,47年マリンスキーJ.A.Marinskyらがウランの核分裂生成物中からはじめて分離し,またネオジムを中性子で衝撃して合成した。ギリシア神話のプロメテウスにちなんで命名された。これまでに約10種の同位体が知られているが,いずれも半減期は短い(30秒~18年)。天然には安定な同位体は存在しない。ウラン鉱中にトレース量(4×10⁻15g/kg)存在する。とくにネオジムをウラン原子炉の中性子で照射すると,147Pmが多量に得られる。
145Pmが最長寿命で18年。化学的性質は典型的な希土類元素で,化合物は通常3価。147Pm3⁺の塩(淡紅色)のミリグラム量が原子炉でつくられている。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Pm.原子番号61の元素.電子配置[Xe]4f 56s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.質量数126~163までの同位体核種が知られている.すべて放射性核種.安定同位体は存在しない.地上には存在しないが,アンドロメダ星雲中の星に分光スペクトルから存在が観測された.もっとも長寿命(半減期17.7 y)の同位体の質量数は145.1941年,オハイオ州立大学のサイクロトンでネオジム,プラセオジムを重陽子で照射して生成したと報告し,サイクロニウムと命名したが確認されず,J.A. Marinsky,L.E. Glendenin,C.D. Coryellがオークリッジ国立研究所の黒鉛炉の核分裂生成物からイオン交換樹脂で分離してはじめて1945年に確認された.軍事機密とされていたので発表は1947年.人工元素であることから天上から火を盗んだとされるギリシア神話のプロメテウスにちなんで命名された.密度7.22 g cm-3.融点1042 ℃,沸点2700 ℃.第一イオン化エネルギー5.582 eV.原子半径183 pm.主要酸化数3で化学的性質はネオジム,サマリウムに似ている.30種類あまりの化合物がつくられた.プロメチウム塩は高い放射能のために暗闇で淡青または緑色蛍光を発する.もっとも普及している用途は,蛍光灯点灯管の放電開始特性向上用で,半減期2.62 y の β- 崩壊核種 147Pm が用いられている.[CAS 7440-12-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…天然に存在せず,人工的方法(核反応)によってのみ作り出される元素をいう。ふつう,周期表上原子番号43のテクネチウムTc,61のプロメチウムPm,85のアスタチンAt,87のフランシウムFr,および93のネプツニウムNp以降の諸元素(超ウラン元素)を人工元素とみることが多い。しかし,この定義は厳密なものとはいえない。…
※「プロメチウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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