Pr.原子番号59の元素.電子配置[Xe]4f 36s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量140.90765(2).安定同位体が質量数141(100%)のみの単核種元素.質量数121~159の放射性同位体が知られている.1842年,C.G. Mosanderはランタンを発見した鉱物中に,さらにランタンと性質がよく似た新元素を発見し,ギリシア語の双子を意味するδιδυμο(didymos)からDydimium(ジジム)と命名した.1885年に至り,オーストリアのC.F. Auer von Welsbach(ウェルスバッハ)がジジムをさらに二元素に分離し,一方を“新しい双子”Neodymium(ネオジム),他方を緑色の塩を与えることから,ギリシア語の緑を意味するπρασιο(prasios)と合わせて“緑の双子”Praseodimiumと命名した.日本語の元素名はドイツ語の元素名Praseodymの音訳.
モナズ石,バストネス石に含まれる.地殻中の存在度3.9 ppm.中国では全希土類の埋蔵量(30%)・生産量(98%)でともに一位(2007年).溶媒抽出法で希土類相互分離後,塩化物・フッ化物のアルカリ金属塩化物・フッ化物との混合溶融塩電解により得られる金属は銀白色.六方最密構造のα態と,792 ℃ 以上の体心立方構造のβ態がある.融点931 ℃,沸点3512 ℃.密度はα態:6.773 g cm-3,β態:6.64 g cm-3.硬さ6.5.酸と熱水に易溶で,H2 を発生する.第一イオン化エネルギー5.464 eV.酸化数3,4.三価の化合物はほかの希土類と同じく,炭酸塩,シュウ酸塩,フッ化物などが水に不溶.塩類は結晶,水溶液ともに緑色.Pr3+,Pr4+ の電子配置は4f 2,4f 1で常磁性.PrⅣ化合物は非常に少なく,PrⅢ2O3を空気中で加熱すると得られる黒色の酸化物はPrⅣ O2と表されるが不定比化合物に近い.
Pr4+/Pr3+ の標準電極電位は2.86 V と強力な酸化剤で,水を分解して酸素を発生させる.このほか,Na2PrⅣ F6はPr塩を F2 雰囲気中で300~500 ℃ に加熱すると得られる.ライター用発火合金の成分の一つ.酸化物はアーク灯炭素電極の成分.塩はガラスの着色に使われる.マグネシウムとの合金は,高張力・低クリープ特性でジェットエンジン部品に使用される.[CAS 7440-10-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされジジムdidymiumと呼ばれていたものを二つの元素に分けることに成功し,一つをネオジム,もう一つを,その化合物は緑色が多いことからギリシア語のprasios(ニラ色の,淡緑色の)にちなんでプラセオジムと命名した。主要鉱石はバストネサイト,モナザイト,ゼノタイムなど。銀白色金属で,空気にふれると酸化皮膜をつくって黄白色となる。展延性があり,酸に易溶。熱水により水素を発生する。化合物は通常3価で,固体および水溶液では美しい緑色を呈する。常磁性。それ以外の酸化数の化合物としてはPrF4やPrO2とPr2O3の混合酸化物であるPr6O11(黒色)などがある。塩化物の溶融塩電解あるいはフッ化物のLi-Mg合金による還元などで得られる。ガラス工業,窯業などで着色剤としてPr6O11が用いられ明るい黄緑色を与える。サングラス,フィルターなどにも用い,青色光から紫外線をよく吸収する。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
周期表第3族、希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのウェルスバハがそれまで元素と考えられていたジジムdidymiumを分別結晶法によって二つの部分に分け、その一つに含まれる元素をプラセオジムと命名した(他の一つはネオジム「新しい双子」である)。分離した酸化物が緑色であったため、ギリシア語の「ニラの緑」prasiosと「双子」didymosによっている。
塩化物の溶融塩電解、またはアルカリ金属による還元によって金属を得る。銀白色の金属。空気中に放置すると、表面が酸化されて黄色になり、290℃以上では発火して酸化物となる。熱水や酸に水素を発生して溶ける。酸化数ⅢとⅣの化合物をつくる。
[守永健一・中原勝儼]
プラセオジム
元素記号 Pr
原子番号 59
原子量 140.9077
融点 931℃
沸点 3510℃
比重 α;6.773
β;6.64
結晶系 α;六方
元素存在度 宇宙 0.17(第71位)
(Si106個当りの原子数)
地殻 8.2ppm(第38位)
海水 0.64×10-3μg/dm3
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…1880‐82年ハイデルベルクのR.W.ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始め,生涯その研究に没頭した。希土類のジジムは2種の元素の混合物と予想されていたが,85年彼はその分離に成功し,プラセオジムとネオジムと命名した。1907年にはG.ユルバンと独立にイッテルビウムとルテチウムとを分離した。…
…周期表元素記号=Nd 原子番号=60原子量=144.24±3地殻中の存在度=28ppm(28位)安定核種存在比 142Nd=27.13%,143Nd=12.20%,144Nd=23.87%,145Nd=8.30%,146Nd=17.18%,148Nd=5.72%,150Nd=5.60%融点=1024℃ 沸点=3027℃比重=6.80(六方),7.004(立法)電子配置=[Xe]4f45d06s2 おもな酸化数=III周期表第IIIA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされていたジジムdidymiumを二つの新しい元素に分けることに成功し,一つをプラセオジム,他を新しいジジムneodidymiumと名づけたが,現在ではネオジムと称することになった。主要鉱石はセル石,モナザイト,バストネサイト,ガドリン石などである。…
※「プラセオジム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
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