ヘベシー(読み)へべしー(英語表記)Georg von Hevesy

デジタル大辞泉 「ヘベシー」の意味・読み・例文・類語

ヘベシー(Georg Hevesy)

[1885~1966]ハンガリーの物理化学者。第二次大戦でスウェーデン亡命放射性同位体研究し、トレーサーとして用いる技術開発ハフニウム発見者の一人。1943年ノーベル化学賞受賞

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ヘベシー」の意味・読み・例文・類語

ヘベシー

  1. ( Hevesy György (Georg von Hevesy)━ジェルジュ(ゲオルク=フォン━) ) ハンガリーの物理化学者。コスターとともに七二番元素ハフニウムを発見。また、放射性同位元素インジケーターなどを開発した。一九四三年ノーベル化学賞受賞。(一八八五‐一九六六

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー
へべしー
Georg von Hevesy
(1885―1966)

ハンガリーの物理化学者。ブダペストに生まれる。ベルリン工科大学、フライブルク大学などを卒業後、チューリヒ工科大学のローレンツRichard Lorenz(1863―1929)、カールスルーエ工科大学のハーバー助手を務めた。1911年マンチェスター大学のラザフォードの下で放射性物質に関する研究に従事、1913年ウィーンのラジウム研究所に移り、鉛の同位体をトレーサーとする鉛化合物の溶解度、交換反応の研究を行った。これが放射性同位体トレーサー技術の始まりである。第一次世界大戦で帰国、ブダペスト大学物理化学教授となる。1920年コペンハーゲン大学ボーア理論物理学研究所に客員教授として招かれ、同位体分離の研究を行う。1922年コスターDirk Coster(1889―1950)と共同でX線分光法によりハフニウムを発見し、ボーアの原子構造理論を実証した。同年、マメ科植物による鉛同位体の吸収を測定し、生物学へのトレーサー技術応用の道を開いた。1931年(昭和6)アメリカからの帰途、理化学研究所の招待で来日。1943年ドイツ軍の侵入後はスウェーデンに亡命、ストックホルム大学有機生物学研究室教授。放射性同位元素を利用して各種生物現象の機構を明らかにし、癌(がん)細胞中の血液変化など癌に関する研究も行った。1943年化学反応の研究における放射性同位元素応用の業績によりノーベル化学賞を受賞。主著に『Das Element Hafnium』(1927)、『Radioactive Indicators』(1948)、『Adventures in Radioisotope Research』(1963)などがある。

[後藤忠俊]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ヘベシー」の解説

ヘベシー
ヘベシー
de Hevesy, György

ハンガリーの化学者.1908年ドイツのフライブルク大学で学位を取得.1912年マンチェスター大学に移り,E. Rutherford(ラザフォード)のもとで研究を行う.ここでN.H.D. Bohr(ボーア)と親しくなった.第一次世界大戦に従軍し,戦後,ブダペスト大学教授を一時務めた後,1919年にBohrを頼ってコペンハーゲンに移り,1920年Bohrの理論物理学研究所の客員教授となった.1926年以降は,フライブルク大学,コーネル大学などでも教えたが,1943年からは主としてストックホルム大学で研究した.戦後,一時期,ベルギーのヘント(ガン)大学教授を務めていた.マンチェスター大学では,普通鉛と放射性鉛との分離に取り組み,成功こそしなかったが,放射性鉛の性質の研究を通して微量な鉛を検出する放射性トレーサーの着想を得た.30年後の1943年,この方法の普及を受け,ノーベル化学賞を受賞.コペンハーゲン大学では,72番元素が希土類元素か否かが論議されていた当時,ボーア理論にもとづいて,周期表4族元素ジルコニウムの鉱物中に,この元素を発見した.この発見はボーア理論の強力な裏付けとなった.この元素の名称ハフニウムは,コペンハーゲンのラテン語名Hafniaに由来する.放射性同位元素を利用して各種生物現象の機構を明らかにする研究も行っている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー
Georg von Hevesy
生没年:1885-1966

ハンガリーの化学者。ハンガリー名はHevesi György。フライブルク大学で学位を得,カールスルーエ工業大学でF.ハーバーの助手を務め,1911年マンチェスター大学のE.ラザフォードのもとで放射能の研究を行った。23年コペンハーゲンのN.H.D.ボーアのもとでコスターDirk Coster(1889-1950)と共同で,X線分析法によって72番元素ハフニウムを発見し,ボーアの原子構造論に大きな支持を与えた。26年フライブルク大学教授となり,第2次大戦中スウェーデンに亡命し,ストックホルム大学教授を務めた。一方,放射性同位元素をインジケーターやトレーサーとして化学反応や生物現象の機構の解明に利用し,43年ノーベル化学賞を受賞した。また58年原子力平和利用賞が授与された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー
Hevesy, Georg Charles de

[生]1885.8.1. ブダペスト
[没]1966.7.5. フライブルク
ハンガリーの化学者。ベルリン工科大学,フライブルク大学で学び,カルルスルーエ工科大学で F.ハーバーの助手をつとめ,マンチェスター大学の E.ラザフォードの研究室で放射能について研究した (1911~14) 。その後ブダペスト大学物理化学教授,コペンハーゲンの N.ボーアの研究所の客員教授を経て,フライブルク大学教授となった (26) 。 D.コスターとともにボーアの原子構造論を発展させることに専念,その過程で 1922年ハフニウムを発見した。またトレーサーとして放射性同位体を使用することを開発,生体内の生理過程の解明に大きな貢献をなしたことによって 43年ノーベル化学賞を受賞した。ナチスの手を逃れて,ストックホルムに亡命し,そこの大学で有機化学の教授となった (43) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー

ハンガリーの物理化学者。ハンガリー名はヘベシー・ジェルジュ。1926年フライブルク大学教授。1923年オランダのD.コスターとともにハフニウムを発見。放射性同位元素を化学反応等のトレーサーとして用いることを案出,X線分析の応用,固体の電気伝導率等の研究もある。1943年ノーベル化学賞。第2次大戦中はストックホルムに亡命した。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android