ヘベシー(読み)へべしー(英語表記)Georg von Hevesy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー
へべしー
Georg von Hevesy
(1885―1966)

ハンガリーの物理化学者。ブダペストに生まれる。ベルリン工科大学、フライブルク大学などを卒業後、チューリヒ工科大学のローレンツRichard Lorenz(1863―1929)、カールスルーエ工科大学のハーバー助手を務めた。1911年マンチェスター大学のラザフォードの下で放射性物質に関する研究に従事、1913年ウィーンのラジウム研究所に移り、鉛の同位体トレーサーとする鉛化合物の溶解度、交換反応の研究を行った。これが放射性同位体トレーサー技術の始まりである。第一次世界大戦で帰国、ブダペスト大学物理化学教授となる。1920年コペンハーゲン大学ボーア理論物理学研究所に客員教授として招かれ、同位体分離の研究を行う。1922年コスターDirk Coster(1889―1950)と共同でX線分光法によりハフニウムを発見し、ボーアの原子構造理論を実証した。同年、マメ科植物による鉛同位体の吸収を測定し、生物学へのトレーサー技術応用の道を開いた。1931年(昭和6)アメリカからの帰途、理化学研究所の招待で来日。1943年ドイツ軍の侵入後はスウェーデン亡命ストックホルム大学有機生物学研究室教授。放射性同位元素を利用して各種生物現象の機構を明らかにし、癌(がん)細胞中の血液変化など癌に関する研究も行った。1943年化学反応の研究における放射性同位元素応用の業績によりノーベル化学賞受賞主著に『Das Element Hafnium』(1927)、『Radioactive Indicators』(1948)、『Adventures in Radioisotope Research』(1963)などがある。

[後藤忠俊]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘベシー」の意味・わかりやすい解説

ヘベシー
Hevesy, Georg Charles de

[生]1885.8.1. ブダペスト
[没]1966.7.5. フライブルク
ハンガリーの化学者。ベルリン工科大学,フライブルク大学で学び,カルルスルーエ工科大学で F.ハーバーの助手をつとめ,マンチェスター大学の E.ラザフォードの研究室で放射能について研究した (1911~14) 。その後ブダペスト大学物理化学教授,コペンハーゲンの N.ボーアの研究所の客員教授を経て,フライブルク大学教授となった (26) 。 D.コスターとともにボーアの原子構造論を発展させることに専念,その過程で 1922年ハフニウムを発見した。またトレーサーとして放射性同位体を使用することを開発,生体内の生理過程の解明に大きな貢献をなしたことによって 43年ノーベル化学賞を受賞した。ナチスの手を逃れて,ストックホルムに亡命し,そこの大学で有機化学の教授となった (43) 。

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