改訂新版 世界大百科事典 「ヘラクレイデス」の意味・わかりやすい解説
ヘラクレイデス(ポントスの)
Hērakleidēs
生没年:前390ころ-?
古代ギリシアの哲学者,天文学者。黒海南岸のポントスの生れ。プラトンのアカデメイアに入り,プラトン,アリストテレスに師事。当時の〈哲学者〉のつねとして,多くの分野にわたって対話体で書物を書いたらしいが,今日に伝わるものは数少ない。歴史的なさまざまな著作のなかで,ヘラクレイデスは水星と金星が太陽を中心として回転するという考え方の創始者として,さらには地軸を中心にして,地球が日周運動(自転)をするという考え方を提出した人として知られている。地球の自転説はプラトン派のなかでも決して珍しいものではなく,プトレマイオスも名まえには言及せずに,そうした説を(誤りとして)《アルマゲスト》で触れているが,ヘラクレイデスがこの説をとっていたことは確実である。水星,金星の太陽中心的回転運動,さらにそれを敷衍(ふえん)したT.ブラーエの二重中心説,さらには地球の公転説(ただし太陽中心的ではない)までヘラクレイデスにあるとする説もあるが,おおむね今日の研究では否定的である。
執筆者:村上 陽一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報