改訂新版 世界大百科事典 「ベッリ」の意味・わかりやすい解説
ベッリ
Giuseppe Gioachino Belli
生没年:1791-1863
イタリアの詩人。両親を早く失い,貧困と労働の青年期を送る。やがて,裕福な貴族女性との結婚を契機に教皇庁に職を得ると,ソネット形式による盛んな詩作を行う。貴族や高位聖職者に取り巻かれた生活を送りながら,その腐敗した社会になじむことができず,一方において,民衆をいわばみずからの思想表現の道具としてしか描こうとしなかった,当時のロマン主義文学の姿勢にもあきたらないものを感じていた彼は,自分もまた民衆の一人と位置づけて,その社会の内側から民衆の風習,道徳観,感情などをあるがままの姿で描きだそうと努めた。このような姿勢は当然のことながら表現手段としての言語の問題にも貫かれ,言語の面でも民衆をより直接的にとらえることを目ざした彼は,特権的で,たちまち形骸化していく,いわゆる文学的言語を排して,優に2200編を超える作品をすべてローマ方言で書いた。その作品は死後になって集められ,《ソネット集》と題して出版された。
執筆者:川名 公平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報