日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベネチアーノ」の意味・わかりやすい解説
ベネチアーノ
べねちあーの
Domenico Veneziano
(1410ころ―1461)
イタリア初期ルネサンスの画家。本名はドメニコ・ディ・バルトロメオで、その通称どおりベネチア生まれといわれている。初期の画歴についてはいっさい不明だが、フィレンツェに滞在していた可能性が大きい。それは、1438年4月1日ペルージアからフィレンツェのピエロ・デ・メディチPiero dé Medici(1416―1469)にあてた書簡中で、当時の傑出した画家としてフラ・アンジェリコとフラ・フィリッポ・リッピの名をあげ、フィレンツェ美術との接触をほのめかしているからである。翌1439年にはピエロ・デッラ・フランチェスカを助手としてサンテジディオ聖堂(サンタ・マリア・ヌオーバ病院内)のフレスコ装飾の仕事に従事する。同病院の記録によれば、彼にあまに油が支給されているところから、油彩画の技法を習得していたのではないかと推測されている。1440年代後半サンタ・ルチーア・デイ・マニョーリ聖堂のための祭壇画『聖母子と四聖人』(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)を、統一空間の中に聖なる人物たちを集めた聖会話形式で描く。回廊風の建築や床面装飾はこの画家のもつ非凡な画面構成の力量を示し、建築内に射し込む外光の処理と豊かな色彩の調和は、光と色彩の相互関係に取り組んだ彼の研究成果の現れである。
[小針由紀隆]