日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペラギウス」の意味・わかりやすい解説
ペラギウス
ぺらぎうす
Pelagius
(354―420ころ)
イギリスの修道士、神学者。384年ごろローマで厳しい修道生活を送り、ケレスティウスCelestiusをはじめ多くの人に影響を与えた。アラリックのローマ占領(410)の直前カルタゴ(アフリカ)で司祭の地位を求めたが拒絶され、エフェソス(パレスチナ)で司祭になった。原罪を否定し、人間の自由意志を強調する彼の教説は、アウグスティヌスやヒエロニムスの批判にあい、激しい論争を展開した。418年追放決定以来、姿を消した。『パウロ書簡注解』などいくつかの著作が残っている。
彼によれば、人間は善をも悪をもなすことができる自由意志をもっているが、恩恵は、本来意志が独力でなしうることを、いっそう容易にできるよう助けるもの、とした。アウグスティヌスは「罪に移り行くのには自由意志決定で十分である」が、「義に立ち返るには、恩恵と援助とあわれみが必要である」(『自然と恩恵』23章25)として反対し、416年カルタゴ会議でペラギウスは異端として退けられた。
[加藤 武 2017年12月12日]
『金子晴勇他訳『アウグスティヌス著作集9・10 ペラギウス派駁論集1・2』(1979、1985・教文館)』