日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペレアスとメリザンド」の意味・わかりやすい解説
ペレアスとメリザンド
ぺれあすとめりざんど
Pelléas et Mélisande
ドビュッシー作曲のオペラ。全四幕。1902年完成。同年パリのオペラ・コミック座初演。メーテルリンクの同名の戯曲に基づき、原作の一部を割愛して台本としている。アルモンドの王アルケルの孫ゴローは、森の中の泉のほとりで出会った遠い国の王女メリザンドを城に連れ帰り、妻とするが、彼女はゴローの父違いの弟ペレアスと親しくなる。いらだつゴローはメリザンドにつらくあたり、ペレアスには城を出て行くよう言い渡す。出発を前にペレアスとメリザンドが愛を告白しあっているところへゴローが現れてペレアスを刺し、メリザンドも生まれたばかりの子を残して息を引き取る。完成まで約10年を費やしたこの作品は、ドビュッシーが残した唯一のオペラであるとともに、彼が作曲を通じて自己の個性的な様式を確立したという点できわめて重要な位置にある。さまざまな動機を巧みに処理し、全曲を朗唱風の歌唱で統一し、いっさいの感情の起伏をオーケストラにゆだねる方法は、その後の音楽史に多大な影響を与え、近代オペラ中最高の傑作の一つに数えられている。日本初演は1958年(昭和33)東京都民劇場制作による。
なお同じ戯曲に基づいて、フォーレは1898年に管弦楽組曲を、シェーンベルクは1903年に交響詩を、そしてシベリウスは1905年に劇付随音楽を作曲している。
[三宅幸夫]