ペレアスとメリザンド(読み)ペレアストメリザンド

デジタル大辞泉 「ペレアスとメリザンド」の意味・読み・例文・類語

ペレアスとメリザンド

原題、〈フランスPelléas et Mélisandeメーテルリンクの戯曲。5幕。1893年初演。恋に陥った王妃メリザンドと王弟ペレアスの悲劇を描く。フォーレドビュッシーシェーンベルクシベリウスらがこの戯曲に基づいた曲を作曲している。

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精選版 日本国語大辞典 「ペレアスとメリザンド」の意味・読み・例文・類語

ペレアスとメリザンド

  1. 〘 名詞 〙 ( 原題[フランス語] Pelléas et Mélisande ) メーテルリンクの詩劇による五幕のオペラ。森の美姫メリザンドと夫の異父弟ペレアスの清らかな愛と死を描く。ドビュッシー作曲。一九〇二年パリ初演。

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百科事典マイペディア 「ペレアスとメリザンド」の意味・わかりやすい解説

ペレアスとメリザンド

ドビュッシーのオペラ。20世紀を代表するオペラの一つ。メーテルリンク同名戯曲(1893年初演)を台本とした5幕もので親交の深いイザイエに献呈された。R.ワーグナーの美学と訣別(けつべつ)したドビュッシーが約10年の歳月をかけて完成し,1902年にパリで初演された。歌詞はレチタティーボ風に朗読され,全編を貫く斬新(ざんしん)な音楽語法は《牧神の午後への前奏曲》(1892年−1894年)とともにその後の作曲界に大きな影響を与えた。日本初演はフルネ指揮,日本フィルハーモニー交響楽団ほかの演奏で1958年に行われている。ドビュッシーはその後ポーの原作による2つのオペラに着手したが,いずれも未完に終わった。なおメーテルリンクの《ペレアスとメリザンド》は多くの作曲家の創作欲をかき立て,このオペラの誕生と相前後してフォーレ管弦楽組曲(1898年),シェーンベルク交響詩(1903年),シベリウスの管弦楽組曲(1905年)などの名曲が発表されている。フォーレとシベリウスの作品は劇音楽からの編曲版。
→関連項目メシアン

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改訂新版 世界大百科事典 「ペレアスとメリザンド」の意味・わかりやすい解説

ペレアスとメリザンド
Pelléas et Mélisande

ドビュッシーの残したオペラ。A.ベルクの《ウォツェック》や《ルル》と並ぶ20世紀最大のオペラ作品の一つである。台本はメーテルリンクの同名の戯曲で,フランス象徴主義演劇の代表作とされるこの戯曲の上演を1893年に見たドビュッシーは,すぐに作曲に着手した。95年10月にメーテルリンクに会って作曲の許可を得,1902年,〈5幕12場からなるドラム・リリック〉を完成した。初演は,同年4月30日,パリのオペラ・コミック劇場で,J.ペリエのペレアス,M.ガーデンのメリザンド,A.メサジェの指揮,A.カレの演出によって行われた。

 森の中の古い城のなかで,美しく清らかな女性メリザンドは,ゴローとペレアスという2人の男性に愛されるが,メリザンドとペレアスの恋に嫉妬したゴローは,誤ってメリザンドを殺してしまう。ドビュッシーは,R.ワーグナーから影響を受けたライトモティーフの技法を用いながらも,全音音階や平行和音,小節線から自由になったリズム法など新しい作曲法を導入し,メーテルリンクの原作よりもいっそう深い意味をもった作品を作り上げた。哲学者兼音楽美学者のジャンケレビチは,この作品の中心命題は,人間の〈生と死の神秘〉であると論じている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペレアスとメリザンド」の意味・わかりやすい解説

ペレアスとメリザンド
ぺれあすとめりざんど
Pelléas et Mélisande

ドビュッシー作曲のオペラ。全四幕。1902年完成。同年パリのオペラ・コミック座初演。メーテルリンクの同名の戯曲に基づき、原作の一部を割愛して台本としている。アルモンドの王アルケルの孫ゴローは、森の中の泉のほとりで出会った遠い国の王女メリザンドを城に連れ帰り、妻とするが、彼女はゴローの父違いの弟ペレアスと親しくなる。いらだつゴローはメリザンドにつらくあたり、ペレアスには城を出て行くよう言い渡す。出発を前にペレアスとメリザンドが愛を告白しあっているところへゴローが現れてペレアスを刺し、メリザンドも生まれたばかりの子を残して息を引き取る。完成まで約10年を費やしたこの作品は、ドビュッシーが残した唯一のオペラであるとともに、彼が作曲を通じて自己の個性的な様式を確立したという点できわめて重要な位置にある。さまざまな動機を巧みに処理し、全曲を朗唱風の歌唱で統一し、いっさいの感情の起伏をオーケストラにゆだねる方法は、その後の音楽史に多大な影響を与え、近代オペラ中最高の傑作の一つに数えられている。日本初演は1958年(昭和33)東京都民劇場制作による。

 なお同じ戯曲に基づいて、フォーレは1898年に管弦楽組曲を、シェーンベルクは1903年に交響詩を、そしてシベリウスは1905年に劇付随音楽を作曲している。

[三宅幸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペレアスとメリザンド」の意味・わかりやすい解説

ペレアスとメリザンド
Pelléas et Mélisande

ベルギーの劇作家メーテルランクの戯曲。5幕。 1892年刊,翌年パリ芸術座で初演。象徴派演劇の代表作。メリザンドと夫の腹違いの弟ペレアスとの悲恋を描く。 1902年この作に忠実に従ったドビュッシーによるオペラがオペラ・コミック座で初演され,その斬新さで,当時の演劇界,音楽界に強い衝撃を与えた。

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デジタル大辞泉プラス 「ペレアスとメリザンド」の解説

ペレアスとメリザンド〔曲名:ガブリエル・フォーレ〕

フランスの作曲家ガブリエル・フォーレの管弦楽曲(1898,1900)。原題《Pelléas et Mélisande》。モーリス・メーテルリンクの同名戯曲の劇付随音楽として作曲。その抜粋版である管弦楽組曲が広く演奏される。

ペレアスとメリザンド〔オペラ〕

フランスの作曲家クロード・ドビュッシーのフランス語による全4幕のオペラ(1902)。原題《Pelléas et Mélisande》。モーリス・メーテルリンクの同名の戯曲に基づく。

ペレアスとメリザンド〔曲名:シェーンベルク〕

オーストリア生まれの作曲家アルノルト・シェーンベルクの交響詩(1902-1903)。原題《Pelléas et Mélisande》。メーテルリンクの同名の戯曲に基づく。

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世界大百科事典(旧版)内のペレアスとメリザンドの言及

【オペラ】より

…このような理由から,すぐれた戯曲がただちにオペラに適するとは限らず,すぐれたリブレットが,文学的価値が高いとも限らない。とはいえ,メーテルリンクの戯曲によるドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》,ワイルドの戯曲によるR.シュトラウスの《サロメ》,G.ビュヒナーの原作によるベルクの《ウォツェック》のように,ごくまれに幸福な結びつきが見られるのも事実である。
[オペラと歌舞伎]
 明治年間にドイツに留学した森鷗外は,故郷への便りの中で,オペラという言葉にかえて〈西洋歌舞伎を見た〉と記したという。…

【ドビュッシー】より

…ボードレールの《悪の華》による歌曲《五つの詩》(1887‐89),ベルレーヌの詩による歌曲《忘れられた小唄》(1886‐88),《なまめく宴》第1集(1903),第2集(1904),詩に触発されたピアノ曲《ベルガマスク組曲》(1890,《月の光》を含む)も,同様の意味で重要である。93年メーテルリンクの戯曲《ペレアスとメリザンド》の舞台上演に接して感動し,これを歌劇に作曲しはじめる。95年に一応書きあげ,ついで《ビリティスの三つの歌》(ルイ詩,1897‐98),管弦楽のための《夜想曲》(1899)を書く。…

【フランス音楽】より

…その最初の成果が,マラルメの詩に寄せた《牧神の午後への前奏曲》(1894)であった。
[20世紀]
 ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》の初演(1902)はフランス音楽史にとって最も重要な日付の一つとなった。その勝利が,ワーグナーで大綱としては行きつくところまで行きついていた長調・短調の体系から音楽を解放して,20世紀への道を開いたからであり,それが同時にドイツより西欧音楽の主導権を奪回したことになったからである。…

【メーテルリンク】より

…1886年パリに出てバン・レルベルグらとともに《ラ・プレイヤード》誌に拠って詩壇に登場,89年には詩集《温室》を発表するが,彼の本領はむしろ劇作にあり,象徴主義悲劇の創造を目ざした。《闖入者》(1890),《盲人たち》(1891)上演ののち,1893年に発表した《ペレアスとメリザンド》がドビュッシー作曲の歌劇として成功を博して,彼の劇作家としての地位を決定づけた。彼の作品はいずれも,運命の糸に操られる人間の悲劇を神秘的な雰囲気の中に暗示的に描き出すのを特質とするが,これがリアリズム演劇にはない新風と世人に評価されて,世界各国の劇団が彼の作品を競って上演するようになった。…

※「ペレアスとメリザンド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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