翻訳|Lulu
ベルクの晩年のオペラで,《ウォツェック》とともに20世紀最大のオペラの傑作と評価されている。ベルクは1929年にウェーデキントの戯曲《地霊》と《パンドラの箱》をもとに台本を作ってオペラの作曲にとりかかり,まず34年に《ルル交響曲》という形でまとめて師シェーンベルクの60歳の誕生日に彼にささげた。しかしオペラは35年のベルクの死によって第3幕の途中で中断されたままになった。作曲家兼指揮者のツェルハFriedrich Cerha(1926- )が,第3幕のスケッチやノートをもとに補作完成し,この3幕完全版の《ルル》は,79年2月,カナダ出身のソプラノ歌手ストラータスTeresa Stratas(1938- )のルル,P.シェローの演出,ブーレーズの指揮によって世界初演され大きな話題を集めた。天性の媚態をもつ官能的な女性ルルは,まわりの男たちを次々に死に追いやるが,最後には売春宿で男に殺されてしまう。十二音技法,無調,ジャズ,シュプレヒシュティンメが効果的に用いられて,表現主義的な劇的な緊張にみちた世界を作りだしている。
なお,前記のウェーデキントの両戯曲は,29年に〈断髪(ボブ・ヘア)のバンプ女優〉ルイズ・ブルックスのルルによって《パンドラの箱》の題名で映画化されており,〈運命の女ルル〉のイメージは,原作よりもむしろこの映画などを通じて,〈伝説的〉なものとなっている。
執筆者:船山 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…十二音技法に入ってからシェーンベルクの音楽は構成的な明晰さを増し,ウェーベルンは抽象的な作風となって表現主義の時代を終わる。ベルクのみが未完のオペラ《ルル》(1935)に至るまで生涯表現主義的であり続けた。この時期の代表作としてシェーンベルクの《期待》(1909),《ピエロ・リュネール》(1912),ウェーベルンの《弦楽四重奏のための六つのバガテル》(1913),ベルクのオペラ《ウォツェック》(1912‐24)などがある。…
…アメリカの映画女優。〈ファム・ファタル(運命の女,妖婦)〉の代名詞にすらなっている娼婦ルルを演じた女優として不滅の名を残し,〈断髪(ボブ・ヘア)のバンプ〉と呼ばれる伝説的なスターである。カンザス州生れ。…
※「ルル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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