メカニカルアロイング(その他表記)mechanical alloying

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メカニカルアロイング」の意味・わかりやすい解説

メカニカルアロイング
mechanical alloying

複数の元素および化合物を,固体の状態で機械的に混合して合金を作ること。通常の合金は,溶融状態で溶かし合せたあと凝固させて作成するが,メカニカルアロイングを用いると,溶融状態でも溶け合わない元素同士の合金や,融点が高く溶融させるのが困難な元素あるいは化合物を含む合金を作ることができる。一般に,合金の原料と鋼など硬質の球を密閉容器に入れ,容器ごと回転させて,原料をつぶしながら混合するボールミルが用いられる。これによって,原料が微細な粒子として混合している状態,原料の元素が原子的に混合している状態,さらには原料が結晶性を失ってアモルファス (→非晶質 ) となった状態などが得られる。作成された粉末状原料は,圧縮 (プレス) ,押出しなどの塑性加工によって製品に成形され,一般にはさらに熱処理が加えられる。 1970年に J.S.ベンジャミンがニッケル基の超合金に酸化物を分散させる方法として発明して以来,種々の合金に適用されている。たとえば,リチウム元素のように溶融法には不向きな物質についても合金化できるため,次世代の航空機用構造材,エンジン部材として注目されるアルミ・リチウム合金など,宇宙航空用の新合金や高温超伝導材料に期待されている。類似技術にメカニカルグラインディングがある。これは化合物同士を機械的に混合,すりつぶして別の化合物を作ることを意味する。

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百科事典マイペディア 「メカニカルアロイング」の意味・わかりやすい解説

メカニカル・アロイング

2種類以上の粉末を,硬いボールとともに密閉容器内で高速攪拌(かくはん)することで,ナノスケールでの混合,局所加熱,拡散を生じさせ,合金化すること。プロセスが簡単で,低温でも反応が進む。金属とセラミックスや,比重,融点の異なる金属どうしなど,原料の組合せにほとんど制約がない。結晶粒を微細化させることで,強度磁性などを改善できる,還元のような化学反応を引き起こすことができるなどのメリットがある。この方法を使うことで,比較的簡単に,アモルファス合金,過飽和固溶体金属間化合物などを作ることが可能。新材料の開発や,既存材料の改良に有効で,コストダウンなどの効果も期待できる。

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化学辞典 第2版 「メカニカルアロイング」の解説

メカニカルアロイング
メカニカルアロイング
mechanical alloying

機械合金化法ともいう.ボールミルを用いて異種物質粉を強制的に混合し練り合わせることにより,材料を作成する方法.ニッケルクロム合金(Ni-20質量% Cr)中にイットリア(Y2O3)のような酸化物を分散させた酸化物分散強化合金,いわゆるODS合金(oxide dispersion strengthened alloy)は,この方法により作成される.また,この方法によりアモルファス相が形成することが知られており,非平衡相を作成する手段としても有用とされている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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